音楽祭

《ロ短調ミサ曲》私録 XVIII【新訂版】

当方がこれまで実演に接したバッハ《ロ短調ミサ》BWV232の番付を発表するコーナーの第18回。今回はデイヴィッド・スターン指揮、テルツ少年合唱団、オペラ・フオーコ(管弦楽)の公演に足を運んだ(2019年6月23日 於ライプツィヒ・トーマス教会)。 合唱も管…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(11)

前半戦にも登場したピエール・アンタイが、《ゴルトベルク変奏曲》を引っさげて戦線復帰した(6月22日、連邦行政裁判所)。 ひとまず時をさかのぼる。2005年5月5日。時刻は22時半。最小限の照明がライプツィヒ旧市庁舎の舞台を照らす。そこにピエール・アン…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(10)

2019年の音楽祭、後半の“隠れテーマ”は「ヴァイマル期のカンタータ」だ。4つの演奏会でこの時期の作品をすべて演奏する。その第2回がとりわけ興味深いコンサートとなった。時は6月22日、場所はライプツィヒを離れ、ザクセン・アンハルト州ヴァイセンフェルス…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(9)

今年のハイライトのふたつめは、ピアノのアンドラーシュ・シフによるパルティータ全曲(BWV825-830)演奏会。シフは昨年、ゲヴァントハウスで《イタリア協奏曲》BWV971、《フランス風序曲》BWV831、《ゴルトベルク変奏曲》BWV988を一気に披露した。つまり『…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(8)

今年のバッハ音楽祭、ハイライトはふたつあった。そのひとつ、イザベレ・ファウストとクリスティアン・ベザイデンハウトによるデュオ・リサイタル(6月18日 於コングレスハレ・ヴァイサーザール)。 ファウストのヴァイオリンは自然体の域に達している。自然…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(7)

バッハ音楽祭のコンサートだが、プログラムはすべてヴィヴァルディの書いた作品......。バッハのことをよくご存知の方はすぐにピンとくるだろう。 バッハはヴァイマルにいた1713年ごろ、アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)を始めとするヴェネツィア楽…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(6)

今年は変わり種の催しが多かった。ルイ・マルシャン対バッハの鍵盤対決を創造的に再現したコンサート(6月16日 於シュタットバート)には、トン・コープマンとアンドレアス・シュタイアーが出演した。この演奏会は、1717年の秋にドレスデンで予定されながら…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(5)

「枯れる」といった言葉とは無縁の活動を続けるヘルベルト・ブロムシュテット。このたびは古巣のゲヴァントハウス管弦楽団と、メンデルスゾーンを中心としたプログラムでライプツィヒに“帰還”した(6月15日 於コングレスハレ)。 前半のバッハの協奏曲2曲は…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(4)

アンナ・マクダレーナ・ヴィルケはバッハの2番目の妻。歌手として活躍していた。故郷のヴァイセンフェルスでデビューして、1721年にはケーテンの宮廷音楽家に。まもなく当地の宮廷楽長だったバッハと結婚。以後、妻・母・写譜家などの役割を追うこととなる。…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(3)

ライプツィヒ市は毎年、バッハ演奏に功績のあった人物や団体に、バッハメダルを贈呈している。これまでにレオンハルト、ガーディナー、アーノンクール、コープマン、ヘレヴェッヘ、ブロムシュテット、鈴木雅明、ベルリン古楽アカデミー、ラインハルト・ゲー…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(2)

ライプツィヒ・バッハ音楽祭には若手のための演奏会枠がある。当地のバッハ国際コンクールを始め、各地の国際コンクールを勝ち抜いた若い音楽家のための“ご褒美コンサート”だ。 6月15日、旧取引所に登場したのはヴァイオリンのマリア・ヴロスチョスカ(Maria…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2019(1)

バッハが後半生を過ごしたドイツ中部ライプツィヒ。この街で6月14日(金)、恒例のバッハ音楽祭が始まった。会場は市内のバッハ史跡など。今年は「宮廷音楽家バッハ」をテーマに、23日までの10日間、約160の公演で大作曲家の仕事を振り返る。 オープニングの…

ハレ・ヘンデル音楽祭2019(7)

長身で手足が長く、その立ち居振舞いに素養を感じる。それもそのはずで、アルトのユリア・ベーメは演劇畑の出身。芝居の勉強を終えてから声楽の専門教育を受けた。なぜ転向したかは定かではないが、その声、コントラルトもいけるのではないかと思わせるふく…

ハレ・ヘンデル音楽祭2019(6)

イタリア・ピアチェンツァで学んだメゾ・ソプラノ、ジュゼッピーナ・ブリデッリが6月9日、音楽祭3日目のフュージョン系公演に引き続きステージに上がる。今度はソロの舞台だ。前公演で「おっ!」と思わされた歌い手。さすが有能な主催者だけあって、ブリデッ…

ハレ・ヘンデル音楽祭2019(5)

歌い手にスポットライトを当てて音楽を楽しむ。たくさんの目と耳が一点に集中する。聴き手の期待感は大きい。舞台に立つ主役の緊張感も大きかろう。そんなステージで成果を上げた3人の歌い手を紹介。 カリナ・ゴーヴァンはカナダ出身のソプラノ。バロック・…

ハレ・ヘンデル音楽祭2019(4)

ヘンデル音楽祭といえばオペラである。器楽曲(とくに室内楽)もたくさん聴きたい。だがやはり、オペラ公演の華々しさというか求心力は大きい。この音楽祭のバロックオペラ三昧の日々を楽しみにしているファンも多い。 今年は《アグリッピーナ Agrippina》HW…

ハレ・ヘンデル音楽祭2019(3)

アンナ・プロハスカのガラコンサートに出掛ける(6月4日 於ウルリヒ教会)。プロハスカは17・18世紀音楽に専門性を発揮するかたわら、ヴィトマンやリームらの大規模声楽曲でも重要な役割を果たすソプラノ。このたびはバリトンのフルヴィオ・ベッティーニを伴…

ハレ・ヘンデル音楽祭2019(2)

6月2日(日)はヘンデルの生家・ヘンデルハウスで、「ペルシャとバロックの交差点」なる演奏会を聴いた。チェンバロのジャン・ロンドー、リュートのトーマス・ ダンフォード、トンバク/サントゥールのカイヴォン・シェミラニがトリオで出演。イラン由来の曲…

ハレ・ヘンデル音楽祭2019(1)

ドイツ中部の街ハレは、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの生まれ故郷。ヘンデルは18歳までこの地で生活を営んだ。彼の若いころをしのばせる史跡が今も、あちこちに残る。 街は偉大な作曲家を顕彰し、ヘンデル音楽祭を毎年初夏に開催する。今年も世界中から…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2018(5)

【カンタータ・リング 10】「ミカエル祭 & 三位一体節後第10・14・27主日」▽2018年6月10日 20時 於ニコライ教会 ▽ ガーディナー指揮、モンテヴェルディ合唱団、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ 連続演奏会「カンタータ・リング」の掉尾を飾るのは、ガ…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2018(4)

【PASSION 5】2018年6月15日20時▼ニコライ教会▼アダム・ヴィクトラ指揮、アンサンブル・イネガル ヤン・ディスマス・ゼレンカの受難オラトリオ《カルヴァリ山のイエス》を聴いた。これがとても面白い。ゼレンカはバッハが高く評価した音楽家のひとり。1679年…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2018(3)

【アンドラーシュ・シフのバッハ・ナイト】2018年6月13日20時▼ゲヴァントハウス大ホール ピアノ1台なのでメンデルスゾーンザール(小ホール)かと思ったら、大ホールのほう。《イタリア協奏曲》《フランス風序曲》《ゴルトベルク変奏曲》と続くプログラム。…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2018(2)

【カンタータ・リング1】「待降節と降誕祭」2018年6月8日 20時 於ニコライ教会 ▽ ガーディナー指揮、モンテヴェルディ合唱団、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ 褒めるところがありすぎて書ききれないので、合唱の扱いに照準を合わせる。(いつものよ…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2018(1)

ドイツ中部ライプツィヒで6月、恒例のバッハ音楽祭が開催された。会場は市内のバッハ史跡など。今年は「サイクル」をテーマに、6月8日から17日までの10日間、160を超える公演で大作曲家の仕事を振り返る。 今年の音楽祭は「カンタータ・リング」に始まり「カ…

ハレ・ヘンデル音楽祭2018

ハレ・ヘンデル音楽祭に行った。ハレは中部ドイツの街。ヘンデルの生まれ故郷として有名だ。そのハレが毎年、郷土の偉人を讃えるべく、ヘンデル音楽祭を開催している。歿後250年記念の2009年を境に、豪華な出演陣、楽しい演目、少し凝った企画を盛り込むよう…

ボン・ベートーヴェン音楽祭2017

ベートーヴェンは1770年、ドイツ西部のボンで産声をあげた。そのことにちなみ同地では毎年、この大作曲家の名を冠した音楽祭が催されている。今年のベートーヴェン音楽祭は9月8日から10月1日までの3週間あまり、市内のベートーヴェン史跡やホールを会場に、5…

バーデン・バーデン・ペンテコステ音楽祭 2017

欧州に初夏を告げる聖霊降臨祭。このキリスト教の祭日を境にヨーロッパは、1年でもっとも爽やかな季節となる。それに合わせて各地で盛んに行われるのが音楽祭。ドイツ南西部の温泉町バーデン・バーデンでも、豪華なメンバーによるペンテコステ音楽祭が催され…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2017

ドイツ中部ライプツィヒで6月、恒例のバッハ音楽祭が開催された。ルターの宗教改革から今年で500年。2017年はこの宗教改革をテーマの中心に据え、ルターの改革とバッハの音楽とをともに紹介する。会場は市内のバッハ史跡など。6月9日からの10日間、120を超え…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2016

中部ドイツ・ライプツィヒで6月中旬、バッハ音楽祭が催された。1904年に始まったこの音楽祭は、二度の大戦による中断、プロパガンダに利用された旧東独時代を経て、112周年を迎える。今年は「ハーモニーの秘密」をテーマに、6月10日からの10日間、バッハゆか…

ハレ・ヘンデル音楽祭2016

中部ドイツの丘陵地帯、ザクセン・アンハルト州の街ハレは、ヘンデルの生まれ故郷として知られている。そのことはこの街にとって、精神的には誇りであり、経済的には観光資源でもある。ヘンデル音楽祭では、この両者が密接に結びついている。とりわけ作曲家…