演奏会

読売日本交響楽団 第616回名曲シリーズ

読売新聞社はかつて、アンデパンダン展を主催していた。読響にもその血が流れていることを示すジョヴァンニ・アントニーニ指揮の第1夜。モダンオケの慣習を、力強く打ち破る。 まずもって読響の "古楽アンサンブル化" が著しい。これは「ノンヴィブラートを…

日本フィルハーモニー交響楽団 第704回東京定期演奏会

ピエタリ・インキネンと日本フィルが、シューベルトの交響曲第5番とブルックナーの交響曲第9番とで、今シーズンの仕事をスタートさせた。これがとても佳かった。 シューベルトNr.5にしろブルックナーNr.9にしろ、ひとつひとつの「緊張と緩和」にきちっと筋を…

読売日本交響楽団 第581回定期演奏会

カンブルランがハースの《静物》とラヴェルの《ラ・ヴァルス》とで、演奏会後半を「静と動」の対比プログラムに"偽装"した。《静物》がその場に留まっているわけでもないし、《ラ・ヴァルス》が動き続けているわけでもない。カンブルランの音楽は静でも動で…

テミルカーノフ&読売日本交響楽団

《新世界より》を聴いた。テミルカーノフ&読響の演奏、サントリーホールにて。なんと汎スラヴ主義的なことか。 なるほどドヴォルジャークの交響曲、第7番までは習作、第8番でやっと東欧風味、第9番はアメリカの皮を被ったチェコ音楽。それを、同じスラヴじ…

酒井健治《ブルーコンチェルト》初演

シルヴァン・カンブルラン(指揮)読売日本交響楽団(管弦楽)▼2014年12月4日 東京・サントリーホール 読売日本交響楽団の委嘱に基づき作曲された管弦楽曲の初演。1977年生まれの作曲者は欧州各地で研鑽を積み、多くの作曲賞を受けた。現在はベルリンに住む…

“ブレ” の温泉卵添え ― 河村尚子, ラドミル・エリシュカ & 読響

東京芸術劇場の「世界のマエストロシリーズ」に、チェコの指揮者ラドミル・エリシュカが登場。読売日本交響楽団とともに「お国もの」などを演奏し、喝采を浴びた。 スメタナの序曲《売られた花嫁》でも、ドヴォルザークの交響曲《新世界より》でも、緊張感の…

2.33倍の「英雄」― スクロヴァチェフスキ&読響のベートーヴェン《交響曲第7番》

スクロヴァチェフスキの指揮が当夜、「真の英雄交響曲」を導いた〔2014年10月8日(水)東京芸術劇場▼第11回 読響メトロポリタン・シリーズ〕。 ベートーヴェンの《交響曲第7番》と《同8番》は、作曲時期(1812 年前後)が重なっていることから「ふたご」と言…

アンドレアス・シュタイアー フォルテピアノ・リサイタル

2013年12月4日(水)トッパンホール バッハの《ゴルトベルク変奏曲》とチェンバロとの結びつきに比べて、ベートーヴェンの《ディアベリ変奏曲》とフォルテピアノとの結びつきは格段に強い。フォルテピアノの特色、たとえば音域によって異なる音色、減衰の速…

指揮者は同じ夢を見る?!―スクロヴァチェフスキ&読響

ポーランド出身の指揮者、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキが10月3日、読売日本交響楽団を指揮してベルリオーズとショスタコーヴィチの ”交響曲” を披露した(東京オペラシティ)。前半にはベルリオーズの《ロミオとジュリエット》から「序奏」「愛の情景…

大井浩明「ベートーヴェン:ピアノソナタ全32曲連続演奏会 第1回」

ピアノと聞いて現代人とベートーヴェンとでは思い浮かべるものが違う。その違いに古典派音楽の本当の姿が潜んでいる。そんな違いを大切にしながら鍵盤楽器に取り組む音楽家がいる。大井浩明もそのひとり。 大井はこのたび、ベートーヴェンが思い浮かべるであ…

正気の《幻想》が狂気の底を深める ― ブロムシュテット&ゲヴァントハウス管

ライプツィヒにいる。当地は初夏のはずなのに寒く、雨が続き、旅の疲れもどっと出て正直、コンディションは良くない。この状態で演奏会にいって平気か、と思いながら足を運んだゲヴァントハウス。平気だった。平気と言うよりもむしろ、体力と気力を回復して…

“ヒラリー・汗” は世界を征服できない ― ヒラリー・ハーン リサイタル

2013年5月14日(火)東京オペラシティ コリー・スマイス(ピアノ) ヒラリー・ハーン。積極的に作品の委嘱・演奏に取り組む「新しい音楽性向」と、常にヴィブラートを掛け上下弓とも均質で和声に頓着しない「因習的な米国流演奏法」とが同居するヴァイオリニ…

ロシアの大地で羊は七味の草を食む ― テミルカーノフ&読響

2013年5月10日(金)於 サントリーホール 読売日本交響楽団 第560回サントリーホール名曲シリーズ ユーリ・テミルカーノフ。1938年生まれのロシアの指揮者。豪放磊落なロシア音楽の巨匠といったイメージは大きく裏切られる。むしろ繊細と言ったほうが実際の…

シューベルトはダクテュロス ― ブリュッヘン&新日本フィル

東京の音楽シーン、4月前半の目玉は誰がなんと言おうと「ブリュッヘン祭り」。主催者は「ブリュッヘン・プロジェクト」なるうっすらとクールな名前を付けているけれど、この半月はプロジェクトを遂行するためのビジネスライクな期間だったのではなく、どこ…

整った世界に響く、たがの外れた独り言 ― カンブルランのマーラー《第6交響曲》

3月16日(土)に行われた読売日本交響楽団 第153回東京芸術劇場マチネーシリーズの様子を、同団ウェブサイトにてご紹介。プログラムはマーラー《交響曲第6番》です。この曲の指揮は初めてと語る同団常任指揮者カンブルラン。その首尾やいかに。 「整った世…

下野竜也&読響のブルックナー(読響サイトに出開帳)

2月18日(月)サントリーホールで行われた読売日本交響楽団 第523回定期演奏会の様子を、同団ウェブサイトにて紹介。この日は正指揮者・下野の「卒業演奏会」。プログラムはブルックナー《交響曲第5番》です。その首尾やいかに。 「現代古楽の基礎知識」が…

「舞踏の聖化」とは何か?― サロネン&フィルハーモニア管

エサ=ペッカ・サロネン。フィンランドの作曲家兼指揮者。現在、フィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者を務める。このたびは手兵を引き連れ日本ツアーを敢行した。当方は全国8公演のうち2公演に足を運んだ。今回はベートーヴェン《第7交響曲》をメインに…

深いのはお辞儀だけではない ― ユジャ・ワン

サンフランシスコ交響楽団が15年ぶりに来日(2012年11月19日 サントリーホール)。マイケル・ティルソン・トーマスが音楽監督になって2度目の日本公演だ。この日のプログラムはラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》作品43と、マーラーの《交響曲…

サンタは五度圏を旅する ― セゲルスタム&読響

読売日本交響楽団 第151回芸劇マチネーシリーズ 2013年1月26日(土)東京芸術劇場 第522回定期演奏会に引き続きレイフ・セゲルスタムが指揮棒を振る。R・シュトラウスの交響詩《死と変容》とシベリウスの《交響曲第2番》との間に、セゲルスタム自作の交響…

モーツァルトとマーラーをサンタが出会わせた―セゲルスタム&読響

読売日本交響楽団 第522回定期演奏会 2013年1月21日(月)サントリーホール その見た目と、北欧という出自から「サンタクロース」との愛称もある指揮者レイフ・セゲルスタム。このたび読売日本交響楽団を指揮してマーラーの交響曲第5番 嬰ハ短調を披露した…

チャイ4でハルがサイテンした!― ハーディング&新日本フィル

新日本フィルハーモニー交響楽団の第501回定期演奏会に、同団ミュージック・パートナーの指揮者ダニエル・ハーディングが登場。チャイコフスキーの《交響曲第4番ヘ短調》とストラヴィンスキーのバレエ音楽《春の祭典》で大勝負に挑んだ(11月28日 サントリ…

無邪気な君は手を出すな!―カルミニョーラ ヴァイオリン・リサイタル

2012年11月7日(水)トッパンホール ジュリアーノ・カルミニョーラの「モーツァルト・ナハト」。プログラムは《クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ》ト長調 K379(373a), 変ロ長調 K378(317d), へ長調 K377(374e), イ長調 K526で、「ヴァイオリン付き…

「羯諦羯諦」と唱えたのはツェンダーでなく細川だった―読響第519回定期

2012年10月27日(土) サントリーホール 指揮:シルヴァン・カンブルラン バリトン:大久保光哉 / アルト:藤井美雪 合唱:ひろしまオペラルネッサンス合唱団 / 管弦楽:読売日本交響楽団 ハンス・ツェンダー《般若心經―バリトンとオーケストラのための》 (創…

スクロヴァチェフスキはバイロイトからヴィーンを眺める―読売日響第147回オペラシティシリーズ

指揮者スクロヴァチェフスキが9月30日、読売日本交響楽団とベートーヴェンの交響曲で共演。東京初台のオペラシティで第2番と第3番を披露した。 第518回定期演奏会に引き続きこの日も、スクロヴァチェフスキは輪郭のはっきりとした「緊張と緩和」で楽曲を造…

スクロヴァチェフスキは誰を葬ったのか?― 読売日本交響楽団第518回定期演奏会

米寿の指揮者スタニスラフ・スクロヴァチェフスキが、古希のクラリネット奏者リチャード・ストルツマンを迎え、読売日響を指揮。自作を交えた3曲を披露した(9月24日, サントリーホール)。当夜、スクロヴァチェフスキは、「甘美な死」がどれだけ「安息」に満…

BCJの《ロ短調ミサ》(ヨーロッパ・ツアー)

5月27日(日)バーデン・バーデン祝祭劇場(ドイツ) ハナ・ブラシコヴァ, ヨハネッテ・ゾマー(以上S), ロビン・ブレイズ(A), ゲルト・テュルク(T), ペーター・コーイ(B) 鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン 「つんつるてん」という言葉…

「かすがい」を密かに打つ ー カンブルラン&読響

読売日本交響楽団 第514定期演奏会 2012年4月16日 サントリーホール 指揮 シルヴァン・カンブルラン ドビュッシー《牧神の午後への前奏曲》 ドビュッシー バレエ音楽《おもちゃ箱》 ストラヴィンスキー バレエ音楽《ペトルーシュカ》(1947年版) 場面を描き出…

ボヘミアをめぐる普墺戦争 ー アルミンク&新日本フィル

2012年4月14日(土) 新日本フィルハーモニー交響楽団第492回定期演奏会 クリスティアン・アルミンク(指揮) マティアス・ヴォロング(ヴァイオリン) スーク《組曲「おとぎ話」》作品16 ドヴォルジャーク《ヴァイオリン協奏曲 イ短調》作品53 ヤナーチェク…

「五度圏は永久に不滅です」ダウスゴー&新日本フィル

新日本フィルハーモニー交響楽団 第491回定期演奏会 2012年3月15日 サントリーホール トーマス・ダウスゴー。デンマークの指揮者。優秀。どう優秀?まず1曲目。なぜチャイコフスキーの幻想序曲《ロメオとジュリエット》なのでしょうか。続くシベリウス《第…

フライブルク・バロック・オーケストラのバッハ≪管弦楽組曲≫

わたくしの職業上の秘密をひとつ披露いたしましょう。それは「舞曲演奏の出来不出来を知りたかったらジグを聴け!」というもの。10年欧州に通って古楽を聴いてきた結果、自然と身に付いた「判定法」です。 「ジグ」は複合3拍子の速い舞曲。「短短短,短短短…