日本フィルハーモニー交響楽団 第704回東京定期演奏会
ピエタリ・インキネンと日本フィルが、シューベルトの交響曲第5番とブルックナーの交響曲第9番とで、今シーズンの仕事をスタートさせた。これがとても佳かった。
シューベルトNr.5にしろブルックナーNr.9にしろ、ひとつひとつの「緊張と緩和」にきちっと筋を通すから、あちこちに仕込まれた「肩すかし」も利いてくる。また "筋の通し方" もすばらしい。緊張感の変わりゆく様子を、力感の変化(弓づかいや息づかいの力動)とレジスターの変化(管楽器の重ね方と、ティンパニを含むバス声部の出し入れ)とで縁取っていく。
そうするとブルックナーでも、物量作戦というか絨毯爆撃というか、そういう音量競争みたいなことにはならずに、音楽の迫力、緊張感の落差を表現できる。これができれば立派なもので、このコンビが良い方向に歩みを進めているのが分かった。
あとはコンスタントにこういう結果を出していければ、ファンがもっと増えるはず。要はセリング(売りつけ方)でなくクオリティである。(2018年10月12日 [金] 於サントリーホール)
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