テミルカーノフ&読売日本交響楽団

 《新世界より》を聴いた。テミルカーノフ&読響の演奏、サントリーホールにて。なんと汎スラヴ主義的なことか。
 なるほどドヴォルジャーク交響曲、第7番までは習作、第8番でやっと東欧風味、第9番はアメリカの皮を被ったチェコ音楽。それを、同じスラヴじゃとてテミルカーノフは、東ヨーロッパ平原の穀倉地帯をうねりながら駆け巡る疾風のように振る。チェコ音楽というよりロシア民謡、いや汎スラヴ節。こうなるともう、アメリカなんてどうでもよくなって、新世界はきっと、あのウラル山脈の向こう、ノボシビルスクに違いない、と思えてくる(モスクワから見てる)。
 ここまでスラヴィスムの濃厚な、そしてアメリカ色のあせた《新世界より》は聴いたことがないし、オケも弾いたことがなかったのではないか。その証拠に楽団は当夜、指揮者に振り回されっぱなしだった(必死の形相でついていく)。精鋭部隊の必死の形相って悪くない(悪趣味)。個性的でじつに滋味深い公演だった。


読売日本交響楽団 第609回名曲シリーズ▼指揮:ユーリ・テミルカーノフ▼2018年2月20日(火)19時▼サントリーホール



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