当方がこれまで実演に接したバッハ《ロ短調ミサ》BWV232の番付を発表するコーナーの第21回。今回は2026年6月のバッハ音楽祭公演と、同7月のバッハ・コレギウム・ジャパン第173回定期演奏会を追加する。
近年、トーマス合唱団の水準が上がってきた。明らかに新しいカントル、ライツェの功績だ。絶対値としては満足できる水準にはないのだが、以前の状態を知るものとしては、右肩上がりなだけでも喜ばしく感じる。
バッハ音楽祭の千穐樂には、そのライツェ指揮、トーマス合唱団&ベルリン古楽アカデミーが登壇し、バッハ畢生の大作を演奏した。管弦楽が非常に素晴らしかったことに加え、ライツェが現代のロ短調演奏の思潮、つまり十字架の死の深みと復活の高みとの落差、とくに後者の高みを大きくとる解釈を採用したこと、さらに必ずしも万全のアンサンブルでないトマーナーのその「下手さ」をも表現のひとつとして利用したことにより、表出の強度が増した。そのおかげで、演奏上のさまざまなキズも、ミサ典礼文の世界を壊すにはいたらない。ロ短調としてはなかなか聴きごたえのあるものとなり、感心した次第。
その点で、7月のBCJのロ短調は、死の淵が浅く、復活の峰の低い(念のために記すが、「浅い・低い」は表現上の問題であって演奏水準の問題ではない)解釈で、まろやかな演奏とも言えるが、微温的な演りくちとも捉えられかねない(たとえば〈Et incarnatus est〉の「Maria virgine」における引き裂くような不協和音や、〈Confiteor〉のAdagio部分の綱渡りするような和声進行が、いずれも舐めたネジ山のように進んでいった)。
さて、相変わらずガーディナーの圧倒的第1位は揺らぐことはない。これはあくまで「私録」なので、ランキング内容についてのクレームはご容赦を(笑)
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第01位 ガーディナー, モンテヴェルディ合唱団&イングリッシュ・バロック・ソロイスツ(ライプツィヒ・トーマス教会, 2010年)
第02位 ユングヘーネル, カントゥス・ケルン(アルンシュタット・バッハ教会, 2011年)
第03位 ヘンゲルブロック, バルタザールノイマン合唱団&同アンサンブル(同トーマス教会, 2009年)
第04位 ビケット, イングリッシュ・コンサート(同トーマス教会, 2012年)
第05位 コープマン, アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団(同トーマス教会, 2014年)
第06位 クリスティ, レザール・フロリサン(同トーマス教会, 2016年)
第07位 エリクソン, エリクソン室内合唱団&ドロットニングホルム・バロックオーケストラ(同トーマス教会, 2004年)
第08位 コープマン, アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団(すみだトリフォニーホール, 2018年)
第09位 ブロムシュテット, ゲヴァントハウス合唱団&同管弦楽団(同トーマス教会, 2005年)
第10位 コープマン, アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団(同トーマス教会, 2025年)
第11位 鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(同トーマス教会, 2023年)
第12位 ヘレヴェッヘ&コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(同トーマス教会, 2024年)
第13位 鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(サントリーホール, 2015年)
第14位 ヤコプス, バルタザール・ノイマン合唱団&ベルリン古楽アカデミー(同トーマス教会, 2011年)
第15位 NEW! ライツェ, トーマス合唱団&ベルリン古楽アカデミー(同トーマス教会, 2026年)
第16位 鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(東京オペラシティ, 2024年)
第17位 フェルトホーヴェン, オランダ・バッハ協会(東京オペラシティ, 2011年)
第18位 アーノンクール, シェーンベルク合唱団&コンツェントゥス・ムジクス・ヴィーン(サントリーホール, 2010年)
第19位 ブロムシュテット, ドレスデン室内合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団(同トーマス教会, 2017年)
第20位 NEW! 鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(東京オペラシティ, 2026年)
第21位 ミンコフスキ, レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル=グルノーブル(ケーテン・ヤコブ教会, 2014年)
第22位 鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパン(バーデン・バーデン祝祭劇場, 2012年)
第23位 へレヴェッへ, コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(ケーテン・ヤコブ教会, 2010年)
第24位 濱田芳通&アントネッロ(東京オペラシティ, 2024年)
第25位 ピノック, 紀尾井バッハコーア&紀尾井シンフォニエッタ東京(紀尾井ホール, 2015年)
第26位 ラーデマン, ゲッヒンガー・カントライ、バッハ・コレギウム・シュトゥットガルト(同トーマス教会, 2015年)
第27位 ブリュッヘン, 栗友会合唱団&新日本フィル(すみだトリフォニーホール, 2011年)
第28位 ノリントン, RIAS室内合唱団&ブレーメン・ドイツ室内管弦楽団(同トーマス教会, 2008年)
第29位 へレヴェッへ, コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(同トーマス教会, 2003年)
第30位 シュヴァルツ, トーマス合唱団&ベルリン古楽アカデミー(同トーマス教会, 2018年)
第31位 ビラー, トーマス合唱団&ストラヴァガンツァ・ケルン(同トーマス教会, 2006年)
第32位 延原武春, テレマン室内合唱団&テレマン室内オーケストラ(いずみホール, 2011年)
第33位 シュミット=ガーデン, テルツ少年合唱団&コンツェルトケルン(同トーマス教会, 2007年)
第34位 ビラー, トーマス合唱団&フライブルク・バロック・オーケストラ(同トーマス教会, 2013年)
問題外 ファソリス, スイス・イタリア語放送合唱団&イ・バロッキスティ(同トーマス教会, 2022年)
問題外 スターン, テルツ少年合唱団, オペラ・フオーコ(同トーマス教会, 2019年)
問題外 コルボ, ローザンヌ声楽アンサンブル&器楽アンサンブル(東京国際フォーラム, 2009年)
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