エマニュエル・パユ「ドリームタイム」

「ドリームタイム」◇ エマニュエル・パユ(フルート)〔WPCS 13823〕

 当代一のフルート奏者エマニュエル・パユが、18世紀末から20世紀末までの作品を新録音に盛り込んだ。テーマは「ハイパー・ロマンティック」とのこと。収録曲にスタイルや歴史的な共通点は意図していない、ともいう。とはいえ、これほどの名手となると、期せずしてその音楽表現に一本、芯が通ってしまうもの。このたびの録音では「子音」がそれにあたる。イメージの移ろいを音色変化でたどるというより、その推移を子音の変化、つまり言葉に擬した“音楽の発話”で描写していく。夢そのものでなく夢日記を音楽表現に置き換えているようなものだ。この子音重視の姿勢が、武満作品の母音重視を裏面から照射して、作曲家の個性をいっそうはっきりと浮かび上がらせた。



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