武久源造「バッハの錬金術 Vol.2 No.3」

「バッハの錬金術 Vol.2 No.3」◇バッハ《適正律クラヴィーア曲集》第1集/第2集 第13番〜第18番◇武久源造(チェンバロ, フォルテピアノ)〔ALCD1180〕

 「適正律」とは「平均律クラヴィーア曲集」の誤訳を正したもの。武久はこのシリーズで、音楽史を踏まえ創造的な楽器選択する。第1巻にチェンバロを、第2巻にフォルテピアノをあて、曲集間の差異を鮮やかに浮かび上がらせる。同シリーズ第3弾となる今回はさらに、同じ調の作品を第1集から第2集へと続けて弾く。たとえば嬰ヘ長調の組み合わせ。現代ピアノに適した楽想とされることもある第1巻はチェンバロで。多彩な子音を生かした曲の運びは、現代ピアノとは隔絶した「おしゃべりの世界」を描き出す。一方、第2巻はフォルテピアノで。細かい装飾音の踊るチェンバロ向きの作品を、サウンドの対比で管弦楽風に響かせる。表裏一体の興趣。



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