上岡&新日本フィル「ワーグナー管弦楽曲集」

ワーグナー:タンホイザー, トリスタンとイゾルデ, 神々の黄昏, パルジファル◇上岡敏之(指揮), 新日本フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)〔OVCL-00703〕

 ワーグナーの歌劇の抜粋を並べた演奏会の実況録音盤。プログラムは「愛・陶酔」から「死・癒し」へとつながる物語を紡ぐ。上岡と新日本フィルサウンドはあくまで軽やか。その軽やかさのまま、テンポは伸び縮みし、響きの質量は拡大縮小する。その変化が柳腰のフォルムを感じさせる。サウンドの軽さと柳腰のフォルムとの相性が佳い。それがこのコンビの特質か。従来型のワーグナー演奏とは違うかもしれないが、これはこれで面白い。ただ、演奏水準は必ずしも満足いくものではない。とくに力動性の変化(弦楽器なら上下運弓、管楽器なら息の勢いの差異)が薄く、それに伴って緊張と変化(和声)の彫りが浅い。水準が高まれば個性的なワーグナーとして大いに誇れる。


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