ライプツィヒ・バッハ音楽祭2017

 ドイツ中部ライプツィヒで6月、恒例のバッハ音楽祭が開催された。ルターの宗教改革から今年で500年。2017年はこの宗教改革をテーマの中心に据え、ルターの改革とバッハの音楽とをともに紹介する。会場は市内のバッハ史跡など。6月9日からの10日間、120を超える公演で両者の仕事を振り返る。
 10日、ニコライ教会に登場したのは、マルムベルク率いるエリック・エリクソン室内合唱団とドロットニングホルム・バロック・アンサンブル。ルター派用のミサ曲など、典礼音楽を特集した。精度の高い合唱、その歌声を御堂にくまなく運ぶ管弦楽。両輪がかみ合って一線級のバッハ演奏となった。
 11日にはガーディナーが、モンテヴェルディ合唱団とイングリッシュ・バロック・ソロイスツとともに、ゲヴァントハウスの舞台に登壇。シュッツの詩篇唱では合唱が、語句の繰り返しのもたらす高揚感を表現する。後半の「われらが神は堅き砦」などバッハのカンタータ3曲では、声楽・器楽のすべてが「声」となって会場に響き渡った。
 今年のサブテーマは、モンテヴェルディ生誕450年。バッハ音楽祭初登場となる2組が、卓越した演奏を披露した。13日、ゲヴァントハウスでオペラ「オルフェオ」を上演したのが、サヴァール指揮ラ・カペッラ・レイアル・デ・カタルーニャル・コンセール・デ・ナシオン。声楽と器楽の柔らかな母音が、この作曲家一流の強烈な不協和音を浮き彫りにする。この日はオルフェオ役のモイヨンに、ひときわ大きな拍手が送られた。
 14日の「聖母マリアの夕べの祈り」は、ピションとアンサンブル・ピグマリオンの演奏。ピションはニコライ教会の前後左右上下の空間を大胆に使う。それが音響効果を持つだけでなく、詩の内容を象徴的に表す表現行為そのものになっていた。演奏はまるで精密機械。それをダイナミックな空間配置で展開する。その表出力は圧倒的だ。
 18日の千秋楽は例年通り、トーマス教会での「ミサ曲ロ短調」。今年はブロムシュテット指揮ドレスデン室内合唱団とゲヴァントハウス管弦楽団が担当する。内声を厚めに配した合唱を管弦楽が支え、詞章を平土間に運ぶ。声を殺しがちな現代楽器でこれを実現するのは難しい。指揮者と楽団の相性のよさが功を奏した。
 来年のバッハ音楽祭は6月8日から17日まで。ガーディナー、コープマン、鈴木、ラーデマンらが集い、カンタータ30選を分担して演奏する。


ライプツィヒ・バッハ音楽祭2018 のプログラム


初出:モーストリー・クラシック 2017年11月号





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