ライプツィヒ・バッハ音楽祭2018(5)

カンタータ・リング 10】「ミカエル祭 & 三位一体節後第10・14・27主日」▽2018年6月10日 20時 於ニコライ教会 ▽ ガーディナー指揮、モンテヴェルディ合唱団、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ

 連続演奏会「カンタータ・リング」の掉尾を飾るのは、ガーディナー。4曲のカンタータを披露したが、その頂点は最後の《目ざめよとわれらに呼ばわる物見らの声》BWV140だ。
 花婿を待つ花嫁の喩えで有名な「マタイによる福音書第25章1〜13節」を朗読したのち、シャインの合唱曲「おまえの若くして娶った妻をよろこべ」(箴言第5章18b〜19節)を挟み、福音書の喩えを踏まえたBWV140を続ける。聖書の朗読で音楽の背景に横たわるエピソードを印象付け、そのエピソードに関連する17世紀作品で音楽史的な参照点を準備する。続けざまそこに「目ざめよと呼ばわる声」を響かせる。こうした流れによって聴き手の耳は、きちっとチューニングされる。その耳に、音楽家ひとりひとりの意欲のほとばしる演奏が次々と飛びこんでくる。メッセージ性の点でも音楽性の点でも、人の心を強く揺り動かす。
 作品に縁の深い演奏会場、内容の理解と音楽の把握とに必要な最低限の補助線、歴史研究に基づく楽器と演奏法、未解決の部分を埋める、演奏者の大胆な創意。古楽の粋とはこうした演奏会のことを言うのだろう。





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