音楽祭

バーデン・バーデン イースター音楽祭2016

ドイツ南西部のバーデン・バーデンは、温泉保養地として有名な街だ。長逗留の療養客も多い。そのため、長い滞在でも飽きがこないよう、この街には湯治客向けの各種施設がたくさんそなえられている。ローマ風の公衆浴場、川沿いの遊歩道、色とりどりの花の咲…

ハレ・ヘンデル音楽祭2015

中部ドイツ・ハレはヘンデルの生地。そのことを記念して毎年、ハレ・ヘンデル音楽祭(Website)が開かれる。今年は5月30日から6月14日までの16日間、旧市街の各所を会場に、49の演奏会が催された。 6月4日に足を運んだのは、カウンターテナー、フィリップ・…

バーデン・バーデン ペンテコステ音楽祭2015(4)

舞台はサーカス劇場。花形ブランコ乗りヴィオレッタが、ピエロや軽業師、客らとともに宴に興じる……。『椿姫』をオルガ・ペレチャッコ、演出をロランド・ヴィリャソン、指揮をパブロ・ヘラス=カサドが担当する「若々しい」布陣。バルタザール・ノイマン・ア…

バーデン・バーデン ペンテコステ音楽祭2015(3)

バーデン・バーデンのような温泉場で気分良く1日をスタートさせるには、朝風呂に入るのが一番だけれど、日常にないひとコマという意味では、「アート浴」というのも悪くない選択だ。5月25日はそんな「アート浴」と呼ぶにふさわしい催し、「音楽で目覚める朝…

バーデン・バーデン ペンテコステ音楽祭2015(2)

クリスティアン・ティーレマンの指揮、ザクセン・シュターツカペレ・ドレスデンの管弦楽で、ブルックナーの第4交響曲(5月23日)と第9交響曲(5月24日)を聴いた。 バーデン・バーデン祝祭劇場は欧州最大級のオペラハウスで、座席数2500。ヨーロッパの劇場…

バーデン・バーデン ペンテコステ音楽祭2015(1)

ドイツ南西部の温泉場バーデン・バーデン。ここには、大陸ヨーロッパには珍しい民営のオペラハウス、バーデン・バーデン祝祭劇場がある。2013年、ザルツブルク復活祭音楽祭の向こうをはり、ラトル&ベルリン・フィルをあちらから引き抜いてメインキャストに…

ケーテン・バッハ音楽祭2014(4)

激しい夕立に見舞われた、6日のケーテン。稲妻がきらめき、雷鳴がとどろく。アグヌス教会で隣り合ったヴィーンのジャーナリスト(いつも隣はこの人)に、「今晩のコンサートは『神のご託宣=激しい雷鳴』付きだねえ。Heute Abend haben wir die Konzert mit …

ケーテン・バッハ音楽祭2014(3)

9月5日(金)、アンデルシェフスキ(ピアノ)の《イギリス組曲》他、ドロテー・ミールツ(ソプラノ)&ハンブルガー・ラーツムジーク(管弦楽)のBWV210他を経て、トン・コープマン&アムステルダム・バロック・オーケストラの演奏会へ。 プログラムは《管弦…

ケーテン・バッハ音楽祭2014(2)

西洋音楽の世界で今、もっとも真っ当な音楽家のひとり、イザベル・ファウスト。音楽祭2日目は彼女のソロ・ヴァイオリン・リサイタルで幕を開けた。 バッハの《無伴奏パルティータ第3番 ホ長調》で始まり、クセナキスの独奏ヴァイオリンのための《ミカ》とバ…

ケーテン・バッハ音楽祭2014(1)

1717年、ヨハン・ゼバスティアン・バッハはアンハルト=ケーテン侯レオポルトの宮廷に楽長として招かれた。当時のドイツ語圏の音楽家にとって宮廷楽長は、キャリアの頂点を意味していた(もちろん宮廷の大小や家格の高低はあれど)。32歳にしてバッハは、そ…

ドイツ音楽祭めぐり2014 ― 初秋編

ドイツが誇る作曲家ヨハン・ゼバスティアン・バッハ。この音楽家の名前を冠するお祭は、独国内だけでもいくつも存在していて、それぞれが演目や運営に工夫を凝らし、たくさんの聴衆を集めるべく努力している。 たとえばイースターのころに催される「テューリ…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2014(4)

【キス、キス、キス!】 ライプツィヒ・バッハ音楽祭の千秋楽は《ロ短調ミサ》と相場が決まっている。さすがにこの公演は毎年、札止め。つまり最終日はバッハ目当てのお客さまが多数、市内をウロウロしているということ。だから、そんなお客さまを取り込むべ…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2014(3)

【バッハ・メダル】 20日(金)の午後は旧市庁舎へ。バッハ・メダルの授与式だ。バッハ演奏に功績のあった個人や団体にライプツィヒ市から贈られるこのメダル、2003年からこれまでにレオンハルト、リリング、ガーディナー、コープマン、アーノンクール、マッ…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2014(2)

【22時半のヴィオラ・ダ・ガンバ】 ライプツィヒ・バッハ音楽祭の有料公演は多い日で5つの時間帯に設定されている。11時半、15時、17時、20時、22時半(それぞれ同時多発の場合も)。メインは20時に始まる大規模な演奏会で、11時半は若手、15時や17時は教会…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2014(1)

6月の第1週、中部ドイツは猛暑が続いていたけれど、第2週になると「欧州の初夏」と言うにふさわしい、さわやかな気候が戻って来た。そんな陽気を待っていましたとばかりに6月13日、ライプツィヒではバッハ音楽祭がスタート。22日までの10日間、市内のバッハ…

ハレ・ヘンデル音楽祭2014(2)

【ガラコンサート OAE】 ヘンデルが生まれたころ、ハレ大聖堂はユグノー派(フランスのカルヴァン派)の礼拝に使われていた。ヘンデルが初めに得た音楽の仕事は、このハレ大聖堂でのオルガニストの職だった。外観は質素、内部はがらんとした大きな長堂。残響…

ハレ・ヘンデル音楽祭2014(1)

歌好きにぜひ足を運んでいただきたいのが、ハレ・ヘンデル音楽祭。昨年は中部ドイツを襲った洪水で街が水没、音楽祭は中止。現場のスタッフは復旧の様子から「出来る」と踏んでいたようだが、当局は「大事をとって」ということで、多くの公演が泣く泣くお蔵…

ドイツ音楽祭めぐり2014 ― 初夏編

今年もやってきた、バッハの街・ライプツィヒ。こちら中部ドイツでは初夏らしいさわやかな陽気が続く。いつものアパートを拠点に、音楽祭やら(仕事)、古書店やら(半分仕事)、展覧会やら(やや仕事)、古美術店やら(趣味)をめぐる日々。 白アスパラガス…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2013(7)

ジョン・エリオット・ガーディナー。モンテヴェルディ合唱団やイングリッシュ・バロック・ソロイスツを率いて活躍する指揮者。ライプツィヒ・バッハ音楽祭の常連で、出演のたびに素晴らしい演奏を聴かせてくれる。その「素晴らしさ」の質は一定なのではなく…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2013(6)

バッハにとって「コレギウム・ムジクム」の指揮者 / 座付作曲家は、ライプツィヒ時代の重要な仕事のひとつ。コレギウム・ムジクムはセミプロの音楽団体で、メンバーはライプツィヒの大学生が中心だ。1729年、バッハはこの団体の指揮者を引き受ける。当時、ラ…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2013(5)

「フリーダー・ベルニウス指揮、シュトゥットガルト室内合唱団、シュトゥットガルト・ホフカペレの演奏による、シューベルト未完のオラトリオ《ラザロ》とバッハのカンタータ《キリストは死の縄目に繋がれたり》を、6月18日にライプツィヒ・ニコライ教会にて…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2013(4)

バッハ向きのテノールについて考える。色男でも王子様でもない「立派なテノール」が必要だ。受難曲での福音史家はもちろんのこと、数々のカンタータやミサ、とりわけ《ロ短調》を歌うのには「品行方正」なほうがよい(もちろん私生活は問わない・笑)。ひと…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2013(3)

通奏低音はやはり「言葉」を話す 午前の演奏で感じた思いをさらに強くしてくれたのが、フライブルク・バロック・オ―ケストラ(写真[上])の同日夜の公演(15日, ニコライ教会)。同オーケストラは今年、ライプツィヒ・バッハ音楽祭にとって3つ目の「座付き…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2013(2)

通奏低音が「言葉」を育てる バッハ音楽祭には「若手演奏家育成枠」のコンサートがある。連日、午前11時半から旧証券取引所で行われるもので、各地の国際コンクールで入賞実績のある音楽家がステージに立つ。このシリーズに通っていると思わぬ「掘り出し物」…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2013(1)

ゲリラ戦で幕を開ける 14日、トーマス教会でバッハ音楽祭が開幕した。オープニング・コンサート(#001)はのっけから話題沸騰。なにが話題かって、ゲリラである、ゲ・リ・ラ。飛び入り演説だ。アジテーションなんて久しぶりに見た。 この音楽祭のオープニン…

ライプツィヒ・バッハ音楽祭2013(0)

毎年この時期、ライプツィヒに長逗留するのは、そもそもこの音楽祭のため。11年連続11回目の全日程参加。たくさんのことが変わり、いくらかの重要な芯が変わらずに残っている。バッハを「ライプツィヒ市民の先輩」と考える「街の想い」は重要な芯のひとつ。…

もうひとつの「オランダ人」― ミンコフスキ&レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル

6月1日、ウィーンのコンツェルトハウスで、ディーチュの「幽霊船」(1842年)とワーグナーの「さまよえるオランダ人」(第2稿、1841年春)とを1日で上演するコンサートが開かれた(演奏会形式)。同ホールの国際音楽祭の一環。合唱はエストニア・フィルハー…

ドイツ音楽祭めぐり2013 ― シュパーゲル編

復活祭の時期に続きドイツの音楽祭めぐり。シュパーゲル(白アスパラガス)が旬を迎える5月末〜6月末にかけて、中部ドイツ・ライプツィヒを根城に各地をめぐります。取材の成果は「モーストリー・クラシック」「月刊ピアノ」「音楽現代」などで。さあ4週…

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京2013のまとめ

5月3日【LFJ】中野振一郎の「第二古楽」▼「第一古楽」を知り尽くした人だからできる戦前スタイル▼EIC(ウイセ)の20世紀音楽(Aプロ)▼ブーレーズ作品、ある時はPfの上に倍音を重ね、またある時は下に基音を据える▼ところでラヴェルでヴィブラートびろびろな…

ドイツ音楽祭めぐり2013 ― 復活祭編(5)

オペラ2題 ― モーツァルト《魔笛》編 第1回バーデン・バーデン祝祭劇場イースター音楽祭の目玉はなんといっても、モーツァルトの《魔笛》だ。ブレスリク(タミーノ)、ロイヤル(パミーナ)、イヴァシェンコ(ザラストロ)、ドゥルロフスキ(夜の女王, ケ…