テレマン《パリ四重奏曲》(前田りり子, 寺神戸亮, 上村かおり, チョー・ソンヨン)



テレマン《パリ四重奏曲》▼前田りり子(バロック・フルート), 寺神戸亮(バロック・ヴァイオリン), 上村かおり(ヴィオラ・ダ・ガンバ), チョー・ソンヨン(チェンバロ)〔ML-003〕

テレマン室内楽で音楽は、さまざなな横顔を見せる。「ターフェルムジーク」であれば、楽器編成の重複しない18曲が、バロック期の室内楽の全貌を描いている。いわば楽器編成という外形で多様な音楽の姿を表現する。「パリ四重奏曲」の6曲の楽器編成はすべて共通で、その点では「ターフェルムジーク」とは対照的だ。しかしその音楽は「ターフェルムジーク」に負けず劣らず、色々な表情をたたえる。それを支えるのは奏者の「おしゃべり」だ。子音(音の出だし)、母音(響きの広がり)、声色(音の色合い)などで音楽の対話をあぶりだす。ときには単旋律の中に潜む一人二役までが聴こえて来る。重層的な対話が舞曲と結びつき立体的に。そこにテレマンの真骨頂を見た。

初出:音楽現代 2016年10月号




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