バッハ「オーボエ協奏曲集」インデアミューレ



バッハ「オーボエ協奏曲集」▼トーマス・インデアミューレ(オーボエ、オーボエ・ダモーレ)▼イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ(弦楽合奏)〔CMCD-28330〕

オーボエの名手がバッハの協奏曲三曲と無伴奏パルティータとに取り組む。楽器の音域による音色の違いをそのまま生かし、一本の旋律に潜む複数の登場人物を浮かび上がらせる手腕は見事。音色の変わり目がでこぼこしないようにきちんと手当てするあたりにも、名手の名手たる理由が見える。演奏者の楽興が頂点を築くのは「オーボエ・ダモーレ協奏曲 イ長調」。それぞれのパートで「一人多役」をきちんと彫琢しているので、独奏と総奏との二項対立にとどまらない重層的な「おしゃべり」が聴こえてくる。短調三曲の中に紅一点、咲いている「華やかなイ長調協奏曲」というプログラミングも功を奏した。独奏者の個人史を反映した解説も面白く読める。

初出:音楽現代 2016年4月号



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