バッハ「ヴァイオリン協奏曲集」− カルミニョーラ&コンチェルト・ケルン



ジュリアーノ・カルミニョーラ(ヴァイオリン), コンチェルト・ケルン(管弦楽)〔UCCA1100〕

バッハは1713年、ヴェネツィアの作曲家の協奏曲を深く学ぶ機会に恵まれた。それがのちに、バッハ自身の創作の礎となる。つまりバッハの協奏曲群には、ヴェネツィア楽派の血が脈々と流れている。カルミニョーラは、このバッハ作品に潜むイタリアの遺伝子を、はっきりと浮き彫りにしてみせた。巧みな弓使いが滑舌の良い子音、明るい響きの母音を生み、それがイタリア語の語りを思わせる。手抜かりなく打たれる句読点も、そうした表現に助ける。緩徐楽章では、正確に歩みを進める通奏低音の上で、自在に揺れ動くソロを披露。終楽章の舞曲リズムには、踊り手の上下動が見えるほど。「ヴェネツィア楽派としてのバッハ」がここにいる。

初出:音楽現代 2015年1月号


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