ジャン・フィリップ・ラモー オペラ《プラテ》



 寺神戸亮の指揮する古楽楽団レ・ボレアードが、没後250年を迎えた作曲家の叙情喜劇を取り上げた。ローマの神ジュピテルが、異形の妖精プラテを騙して偽の結婚式を挙げ、妻ジュノンに意趣返しをするたわいのない筋書き。管弦楽は舞台奥で演奏、歌手はその前で、衣装をつけ演技しつつ歌う。
 プラテ役のマティアス・ヴィダルの歌がこの日、聴衆の耳を引きつけた。子音をあらかじめ発音し、母音を音符の上にきちっと乗せる。そのおかげで叙唱もアリアも流れが良い。さらにヴィダルは「演技位置の移動」と「発声位置の移動」とを有機的に結びつける。すると、場面の情緒の変化と歌の響きの変化とが融合する。またジュピテル役のべッティーニ、ラ・フォリー役のアース、シテロン役の与那城敬も好演。 
 卓越した歌をオーケストラもよく支えた。和声の着実な足取りと肩透かし、強弱変化と音色変化との連結は、ラモーの管弦楽の芯に肉薄しているように感じられた。〔2014年11月7日(金)北とぴあ さくらホール〕

初出:モーストリー・クラシック 2015年2月号


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