モーツァルト《ピアノ協奏曲第18・19番》― 内田光子&クリーヴランド管弦楽団



モーツァルト《ピアノ協奏曲第18・19番》▼内田光子(ピアノ・指揮), クリーヴランド管弦楽団(管弦楽)〔UCCD1399〕

内田光子クリーヴランド管弦楽団によるモーツァルト協奏曲集の第4弾。「ピアノ協奏曲豊作年」の2曲を、独奏者の弾き振りで聴く。両者が目指すのは、要のピアノと、管弦楽のそれぞれのパートとが個々に対話をするような「扇形」コミュニケーションではない。彼らが実現したのは(A)ピアノの右手と管楽器、(B)左手と弦楽器、さらに(A)群と(B)群とがそれぞれ言葉を交わす、複雑に絡み合った糸束のようなやりとりだ。管弦楽が楽器の組み合わせの妙を活かして音の色合を変化させれば、内田は音域ごとに違った音色をピアノから引き出しそれに応える。音楽の緊張と緩和の彫りも深く、聴くだけでひとっ走りランニングしたような爽快感。

初出:音楽現代 2014年10月号


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