バッハ《管弦楽組曲》全曲 ― ラ・プティット・バンド



J・S・バッハ《管弦楽組曲》全曲 ― シギスヴァルト・クイケン(指揮), ラ・プティット・バンド(管弦楽)〔KKC5361〕

同バンド2度目の全曲録音。1981年盤が「古楽」とすれば、今回は「古楽古楽」というのがふさわしい。同曲はもともと宮廷でもてはやされたジャンル。フランス風序曲に各種の舞曲が連なる。バッハもリュリ以来のスタイルを手本にした。演奏家の多くは「バッハの音楽」の再現を目指す。クイケンはこの録音で、そのさらに奥の間、フランス風宮廷の響きを志向した。弓の上下の力加減が、揺らいだリズム「イネガル」に自然とつながる。各パートひとりの最小編成ながら、無弁トランペットがそこに迫力を添え、バス・ドゥ・ヴィオロンが厚みを加える。「バッハが書いた」と言うよりもむしろ「バッハが手本にした」管弦楽組曲に近づいている。

初出:音楽現代 2014年7月号


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