アンドレアス・シュタイアー with 佐藤俊介



 フォルテピアノのシュタイアーとヴァイオリンの佐藤が、モーツァルト作品で共演。両楽器のためのいくつかのソナタを中心に、ピリオド・アプローチの芯を見せた。
 たとえばホ短調ソナタ(K.304)。第一楽章後半の両楽器の掛け合いは、単なる音形の受け渡しに終わらない。重要なのは子音。発音時の雑音を音楽作りの手段として重用するのが、18世紀音楽の流儀であり、古楽の身上でもある。「音楽の対話」に刺激と深い味わいとが同居するのはこのため。
 いっぽう、子音の競い合いばかりとはいかない第2楽章に必要なのは音色の対比だが、ここにつまずきの石。楽器の個性か調律師の趣味か奏者の希望かは分からないが、フォルテピアノの高音部にフルートの音色が足りない。ヴァイオリンとフォルテピアノの右手(管音色)との音色の対比を、同左手(弦音色)がつなぐ。そんな場面だっただけに、つまずきが口惜しい。高いレヴェルだからこその無い物ねだりである。(2013年12月11日 トッパンホール)

初出:音楽現代 2014年1月号

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