没後50年記念 フランシス・プーランクの夕べ



 ピアノ独奏からソナタ、六重奏、オルガン協奏曲を経て宗教声楽曲にいたる大規模な演奏会。出演者たちは当夜、そこに一本の太い「柱」を通した。
 和声が明確に落ち着こうとするやはぐらかすプーランクの音楽的身振りを、演奏者は音色の翳りでうまく表現した。そこに作曲者の「不意にあちらを向く物憂げな横顔」が見える。そんな和声と音色との独特の結びつきは六重奏で拡大し、オルガン協奏曲で最大化。さらに《スターバト・マーテル》では合唱が入ることで「和声・音色」のつながりに「具体的な情緒」が加わり、豊かな詩情が溢れ出す。
 ピアノの菊地裕介、クラリネットの伊藤圭、オルガンの鈴木優人らが一枚一枚「世評の皮」を剥ぎ、鈴木雅明の指揮する新国立劇場合唱団と東フィルとが最終的に「作曲家の芯」を聴衆に示す。
 従来なら対位法へとなだれ込むであろう《スターバト・マーテル》の「アーメン」。プーランクはそこで、ひとこと「然り」と曲を締めた。この作曲家らしい「見得」が最後に決まった爽快な一夜。(10月23日 東京オペラシティ


初出:モーストリークラシック 2014年1月号