チャイコフスキー 交響曲第六番《悲愴》― 上岡敏之&ヴッパータール交響楽団



チャイコフスキー:交響曲第六番《悲愴》〔COCQ84840〕
上岡敏之(指揮), ヴッパータール交響楽団管弦楽

ザールラント州立歌劇場音楽総監督の、ヴッパータール交響楽団音楽総監督時代のライブ盤。チャイコフスキーの最後の交響曲で両者の蜜月を示す。「悲愴交響曲」は少し特殊なつくりをしている。上岡とヴッパータールはそれを第一楽章で予告する。同楽章で両者は、開放的な旋律を大きく歌う背後で、和声の緊張感をうねるように扇情的に高めていく。この同時進行する二面性は、参列者を増やしながら進む行進曲の第三楽章と、静けさのうちに音を絞り出す第四楽章とに分解される。こうした作曲者の設計を第一楽章で見事「予言」した点に、上岡と同楽団の充実した関係が見て取れる。情熱的な取り組みと冷徹な計算とはコインの裏表だ。

初出:音楽現代 2013年11月号

追記上岡敏之さんは読響との共演近し!