第8回 Hakuju ギター・フェスタ 2013「バロック」



 荘村清志と福田進一を旗振り役に、国内外のギタリストが集いギターの魅力を発信する音楽祭。今年は「バロック」をテーマに3日間で4公演が行われた。
 第3公演にはバッハ、第4公演にはヴィヴァルディの曲をギター用に編曲した作品が並んだ。第2公演には現代曲のスペシャリスト山田岳が登場、鈴木治行の作品、福井とも子の委嘱新作ほかを演奏。同日の第3公演にはトリスターノの委嘱新作も初演された。第1公演の後半には、海外招聘演奏者グレアム・アンソニー・デヴァインのソロ・リサイタルもあり、プログラムは多彩だ。
 バッハやヴィヴァルディでは18世紀語法がほとんど無視され、バロック音楽の演奏としては疑問も残ったが、ギターが持つ音色の魅力や、ギター奏法から生じる曲の新しい横顔には感心する場面も。現代曲では鈴木治行の「反復の技法」が面白い。バッハの「管弦楽組曲第2番」を、針が飛び速度が不安定なレコードプレーヤーで再生したような作品。聴き慣れたバッハを、無闇な繰り返しや不意に訪れる変化で異化していく。
 今年の白眉はなんと言っても第1公演の第1部。ヴォーカル・アンサンブル カペラと荘村・福田とが共演した。中世・ルネサンスの声楽曲と、それらの編曲に当たる器楽曲とがほぼ交互に演奏される。声とギターの音色の同質性、一方で発声と撥弦という発音の異質性が、聖俗の境目を行ったり来たりするような趣を見事に浮かび上がらせた。〔2013年8月30日(金), 31日(土), 9月1日(日)白寿ホール〕


初出:モーストリー・クラシック 2013年11月号

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