東京都交響楽団「作曲家の肖像」シリーズVol. 93《チャイコフスキー》



 台湾の指揮者リュウ・シャオチャが来日、都響を指揮してチャイコフスキーの特集に臨む。開幕曲は歌劇「エフゲニー・オネーギン」から「ポロネーズ」。コリヤ・ブラッハーを独奏者に迎えた「ヴァイオリン協奏曲」を挟み、後半には「組曲第3番」を置く。「協奏曲」の3つの楽章をそれぞれ、アレマンド、サバランド、トレパークと考えれば、当夜の演奏会は徹頭徹尾、舞曲の集まりだったと言える。
 その観点からすると、上下弓とも均質に運び、レガートで拍節を立たせないブラッハーの演奏は、舞曲の興を削ぎプログラムのコンセプトを弱めた。他方、第2楽章では冴えない右手に代わって左手が活躍。ヴィブラートの種類の多さで豊かなニュアンスを実現した。
 管弦楽からは「強弱」「サウンドの変化」「和声の緊張と緩和」と結びついた「踊る身体」が聴こえる。それをリュウが持ち前の思い切りの良さで鳴らすのだから爽快感は格別。演目よし、演奏の勢いよし、聴き手のノリよしの三方よしで演奏会を終えた。〔2013年8月24日(土)東京芸術劇場


初出:モーストリー・クラシック 2013年11月号

.