ヤルヴィ& ドイツ・カンマーフィルの「ベートーヴェン:序曲集」



パーヴォ・ヤルヴィ(指揮), ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン(管弦楽)〔SICC10190〕

ベートーヴェン交響曲全集で成果を挙げたコンビによる序曲集。《プロメテウスの創造物》《コリオラン》《フィデリオ》《レオノーレ第3番》《エグモント》《献堂式》が並ぶ。声楽曲は不得意だったが交響曲は得意だったベートーヴェン。序曲は両ジャンルの接点として、ベートーヴェンが創作の翼を拡げることのできる舞台だった。当時、ベートーヴェン交響曲に対しては「まるで管楽合奏のように聴こえた」という批評が残されている。序曲もまた同じ方向性を持っているが、ヤルヴィとドイツカンマーフィルは、そんな当時の人々の驚きを現代に生き返らせるような管弦バランスで演奏にあたっている。不協和音が緊張感としてきちんと機能する秀演。


初出:音楽現代 2013年10月号

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