フルシャ&都響のベルリオーズ《幻想交響曲》



ベルリオーズ《幻想交響曲》/ ヤクブ・フルシャ(指揮), 東京都交響楽団(管弦楽)〔OVCL-00504〕
都響の若き首席客演指揮者フルシャが「幻想」を振った1枚。いかに革新的とは言え、ベルリオーズは19世紀前半の作曲家。フルシャはベートーヴェンからの連続性を大切な柱としているようだ。「和声の緊張と緩和」に「その他の音楽表現」を結びつけていく。前者を「素材と出汁」、後者を「調味料」だと思えばよい。なかには調味料だけで味をなんとかしようとする指揮者もいる。この盤にはそういったファーストフード性は皆無だ。味が濃いわけではないけれど出汁はよく利いている。出汁に支えられた薄味の中で、ときおり山椒がピリリと辛い。はじめはのんびりと聴こえる「断頭台への行進」が、いつの間にか興奮をさそう。スローフードの真骨頂である。

初出:音楽現代 2013年9月号

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