新日本フィルハーモニー交響楽団 第511回定期演奏会



 「夜の音楽」の演奏会。大野和士がシャリーノの《夜の肖像》、ツィンマーマンの《ユビュ王の晩餐のための音楽》、ブルックナーの《交響曲第7番》を振る。
 夜は暗闇のせいで近くのものさえ見えないが、静けさのおかげで遠くの音が聞こえる。
 前二者はタイトルでも「夜」を示す。シャリーノの抑制された音は「夜の遠い音」を思わせる。一方、先人の作品を継いで接いだ《ユビュ王》は、時代的な「遠さ」を音に託し、二十世紀という「音楽の夜の時代」を語っているかのよう。
 和声の解決をはぐらかし続けるブルックナーの音楽は、近くの「終止」が見えない点で「夜の音楽」。ひとつひとつのドミナントできちんと緊張感を高めていく大野の指揮が、はぐらかしの肩すかし感を高める。その反動として、最終的なカデンツに強い安堵感が生まれる。夜、夜、夜の流れに最終楽章で差し込む光。なるほどここで朝ぼらけ。大人の音楽会を実現した指揮者と楽団とに大きな拍手を。(7月6日 すみだトリフォニーホール

初出:音楽現代 2013年9月号