ゲルハルト・ボッセ&神戸市室内合奏団 《スコットランド》他



メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」/ ベートーヴェン:交響曲第4番 / ゲルハルト・ボッセ(指揮), 神戸市室内合奏団(管弦楽)〔KRS461〕
2012年に亡くなったボッセの最晩年の録音。1922年生まれだから80歳代後半の演奏だ。プログラムはボッセの古巣ゲヴァントハウス管ゆかりの2曲。どちらも19世紀前半のドイツ音楽の粋が詰まっている。それは、和声の「緊張と緩和」を背骨として、そこにさまざまな表現技法を取り合わせて音楽を作ること。ボッセの音楽は和声の骨格がしっかりしているから、肉付きが少なくてもさまになる。むしろ、見事な骨格のおかげで肌や爪といった表面の美しさも映える。まごうことなき「モダン演奏」だが、第二次大戦前に教育を受けた音楽家の演奏には、現在の古楽の目指すところに通じた面を見いだすことが出来て興味深い。ボッセはその最も良質な例。

初出:音楽現代 2013年9月号