ライプツィヒ・バッハ音楽祭2013(0)



 毎年この時期、ライプツィヒに長逗留するのは、そもそもこの音楽祭のため。11年連続11回目の全日程参加。たくさんのことが変わり、いくらかの重要な芯が変わらずに残っている。バッハを「ライプツィヒ市民の先輩」と考える「街の想い」は重要な芯のひとつ。それが「観光のため」という部分を含むにしてもやはり、この音楽家ライプツィヒとは強く結ばれている。
 バッハに関して言えば、キリストとのつながりを無視することはできない。例を挙げていてはきりがない。信仰面(=原則)、職業面(=音楽)、世渡りの面(=社会)。バッハにとってキリストとの関係は、生々しい側面を含む抜き差しならないものだった。
 今年のライプツィヒ・バッハ音楽祭は、そんな両者の関係を追う。テーマは「キリストの生涯 Vita Christi」。6月14日から23日の10日間、ライプツィヒの各所を舞台にバッハの音楽でイエスの生き様を振り返る趣向。ミサ(礼拝)がキリストの一生、とりわけ受難と復活とを追体験するための「装置」であることに鑑みれば、今年のバッハ音楽祭は10日かけて「ミサ」を挙げるようなものだ。プログラムをテーマに添って紹介すると次の通り。


待降節
【#001】14日 トーマス教会:《目覚めよと叫ぶ物見らの声》BWV140〔三位一体後第27主日のためのカンタータ。いわば待降節への待降節。同主日は移動祝日の復活祭が早いときにだけ現れる教会暦の末の末)/ ヘンデルメサイア》第1部〔キリストの生誕と復活を描く言わずと知れたオラトリオの前半〕/ トーマス合唱団, ゲオルク・クリストフ・ビラー&ゲヴァントハウス管弦楽団

降誕祭
【#033】16日 ゲヴァントハウス:《クリスマス・オラトリオ》BWV248 / クリステンソン(S), ライス(A), ヨハンセン(T), ヴァイサー(B), テネブレ合唱団, トレヴァー・ピノック&ゲヴァントハウス管弦楽団

受難日
【#068】20日 トーマス教会:《ヨハネ受難曲》BWV245 / ジョン・エリオット・ガーディナー指揮、モンテヴェルディ合唱団、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ

復活祭・昇天祭
【#100】22日 ニコライ教会:《復活祭オラトリオ》BWV249 / 《昇天祭オラトリオ》BWV11 / ジョン・エリオット・ガーディナー指揮、モンテヴェルディ合唱団、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ

総括
【#114】24日 トーマス教会:《ミサ ロ短調》BWV232 / トマーナー(S & A), ラトケ(T), フィーヴェク(B), トーマス合唱団, ゲオルク・クリストフ・ビラー&フライブルクバロック・オーケストラ


 これらのプログラムを核に、その他の教会音楽や世俗音楽、バッハゆかりのオルガンをめぐるバスツアー、国際コンクール入賞者によるご褒美演奏会、無料の野外コンサート(←アパートの前が会場。リハーサルが聴こえてきたが、なかなか楽しい)などが音楽祭を彩る。
 今年はフライブルクバロック・オーケストラが「座付き楽団」として音楽祭に登場。アンドレアス・シュタイアーの《チェンバロ協奏曲》弾き振りなど3公演を披露する(#018, ほかに#034, #114)。またイザベル・ファウストがラインハルト・ゲーベル率いるヘルシンキバロック・オーケストラ(←なかなか面白い楽団)と共演(#057)。《ヴァイオリン協奏曲 イ短調》BWV1041 など。コンバッティメント・コンソート・アムステルダム世俗カンタータを聴かせてくれるのもうれしい(#056, #067)。もちろん《ゴルトベルク変奏曲》BWV988(#059)や《無伴奏チェロ組曲》BWV1007, 1010(#010)、《音楽の捧げもの》BWV1079(フライブルクバロック・アンサンブル, #034)なども。
 今年はまったくもって「バッハ音楽祭」の名前に相応しい布陣で重畳。あとは素晴らしい演奏が繰り広げられるのを待つばかり。そうそう、オープニングコンサートなどはMDR FIGARO(中部ドイツ放送協会)で観られるらしい。深夜・早朝が苦でない方にはおすすめ!