メディアのメディアは何を語る? ― ドイツ国立図書館ライプツィヒ館



 ライプツィヒは「教会と音楽の街」を17世紀以来、自任しているけれど、同じ時期からこの街を特徴付けてきたものに印刷出版業がある。たくさんの書籍出版はもちろんのこと、その中には楽譜も含まれていて、たとえば18世紀の印刷楽譜の出版地はここライプツィヒであることが多い。
 そんな土地柄なので大規模な図書館が市内の各所にある。自分たちの仕事の足跡を留めておこうとする気持ちの表れか。ライプツィヒ大学の図書館は2000万冊以上の蔵書を誇る。市立図書館も立派なものだ。そしてドイツ国立図書館ライプツィヒ館も、そんな大図書館群の一角を占める。
 このドイツ国立図書館(Website)では現在「ポスターに見るメディア史」展(PDF)が開かれている。テレビやラジオ、雑誌や書籍といった情報媒体に関するポスターを集め、展示しているのだ。限られた点数ながら19世紀の終わりから2010年代にいたるまでをカヴァーしていて、イメージの変遷やメッセージの移り変わりを知るには持ってこい。筋の通ったコンセプトと捻りの利いた展示物の選択とに、キュレーターの手腕を見る。
 この展覧会に立ち寄ったのは完全に「ついで」。2011年に観に行った見本市会場の廃墟(ブログ記事)が現在、どうなっているかを知りたくて自転車を飛ばした帰り、たまたま目に入ったのがポスターの展示を知らせるポスター。DDR旧東ドイツ)の広告デザインが観られるかな、というつもりで入館した。無料。
 入ってみると120年分くらいのポスターが並ぶ。もちろん選りすぐりの百点ほど。たとえば「読む」というコーナーには「読書週間」や「『こどもの本』の日」などの広告が集められる。ほかにも「動物」や「赤色」などのテーマ別コーナーも。その先にはポスターが編年で展示される。なかには(当然ながら)「アドルフ・ヒトラーの『我が闘争』400万部超」といったものも(”Das Buch der Deutschen” ca.1938, Offsetdruck)。

 面白かったのはソーシャル・ネットワークの「プロパガンダ広告」を擬古的に創作したポスター群(Aaron Wood〔*1971 Massachusetts〕”Social Media Propaganda Posters” 2012, Offsetdruck)。Facebookの入会申し込み書がカード式の用紙で、そこに万年筆が添えられているなど、(ポスター上部の文言も含め)なかなか皮肉が利いている(最下部左)。「手短に言え!盗聴されるぞ!」なるTwitter広告も秀逸(最上部左)。
 アパートに帰るとあんなに晴れていたのが嘘のように雷が。文字通り「青天の霹靂」。素直に巣ごもりしてシュパーゲルを茹でる。今期10本目を完食した。休日の贅沢、ここに極まれり。今週からいよいよライプツィヒ・バッハ音楽祭だ。


写真:(上から)ドイツ国立図書館ライプツィヒ館、展覧会「Anschlag. Plakate zur Mediengeschichte」ポスター各種