室内オペラ《RAMPO 2011》(コンサート形式)



2011年8月24日(水) 東京オペラシティ・リサイタルホール

 震災の影響で延期になった公演がやっと陽の目を見た。乱歩の傑作『陰獣』を下敷きにした全4幕の台本に、土屋雄鈴木純明、由雄正恒、小櫻秀樹が分担して音楽をつけた。4幕には各作曲家の個性が色濃く映る。とりわけ、表現主義的な朗唱と16〜18世紀風の音楽とが鮮やかなコントラストを描く第2幕や、地の音楽と電子音響によるこだまとが長大なカノンを形成する第3幕が、『陰獣』を読み解く鍵である二重性を上手く掬い取っていた。
 だが当夜、乱歩の仕組んだ二捻り半のトリックをもっとも鮮やかに表現したのは、舞踊の坂田守だ。主人公の小山田静子(太田真紀)にまとわりつく舞は、始めこそ静子を付け狙う平田を表しているかのようだが、徐々に静子と同化していき、最終的には静子そのものとなる。それにより乱歩の描いた倒錯の世界が極まった。
 声楽アンサンブル「マドリガールズ」や春日保人(バリトン)、清水那由太(バス)にも拍手を送りたい。指揮・演出は初谷敬史。


初出:モーストリークラシック 2011年11月号