ライプツィヒ・バッハ音楽祭2012(1)



 バッハがその後半生を(苦汁をなめつつ!)過ごしたライプツィヒ。当時の為政者がバッハを邪険にしたとしても、現在は街のヒーローだ。そんなバッハの業績を偲んで毎年この街で催されるのがバッハ音楽祭。1904年に始まった老舗フェスティバルで、今年で108周年を迎える。
 1世紀を超える音楽祭の歴史以上に重要なのは、この地の中心教会であるトーマス教会と、その音楽を担い続けたトーマス合唱団が800周年を迎えたこと。というわけで、今年のテーマは「新しい歌を…トーマス合唱団800周年」と相成った。そんなテーマのもと6月7日(木)から17日(日)までの11日間、市内のバッハ史跡を会場に、音楽家たちがバッハ演奏の腕を競う。公演数は123。世界でも最大規模の古楽祭のひとつだ。
 音楽祭と言うのは玉石混淆で、そこが魅力のひとつでもある。目玉公演あり、そうでない公演あり。予想を越えて素晴らしい「大穴公演」もあれば、期待はずれの「目玉公演」もある。今年も20を超える公演に足を運ぶ。そのうち良質な演奏会を中心に、現地の様子を紹介していこう。


#01 オープニング・コンサート(7日/トーマス教会)
 現在のトーマス・カントル、ビラーの指揮でトーマス合唱団が歌う。ゲヴァントハウス管弦楽団が器楽を担当。例年のことだけれど、特に感心するところはない。いちおうオープニング・コンサートと言うことで、演奏会が滞りなく行われました、という報告。


#05 愛好家のために --- 17世紀ライプツィヒの大学音楽(7日/宗教改革教会)
 ハンブルク市音楽団(Hamburger Ratmusik)なる弦楽器のコンソート。シャインやシャイト、ローゼンミューラーの音楽を編成を変えつつ紹介する。基本はヴィオール族のホールコンソート。ときおりヴァイオリンやギターが加わってアクセントを施していく。17世紀の音楽は、僕らの耳にはギョっとするような瞬間、たとえば和声だったりリズムだったりを聴かせてくれることがある。そんな瞬間とヴィオール族の落ち着いた響きとのコントラストがまた、興味深い。落ち着いた響きと言っても「宮廷のヴィオール」ではなく「17世紀の大学生の弾くヴィオール」だ。だから、多少エッジを効かせ気味なところも好もしく感じる。あまり注目の公演とは言えないが、パーティーを放り出し、こちら参加して正解。


次回は「鈴木雅明バッハ・メダイユ授賞式」「BCJ《マタイ受難曲》」。


写真:バッハの墓(ライプツィヒ・トーマス教会)