ドイツ音楽祭めぐり2014 ― 初秋編



 ドイツが誇る作曲家ヨハン・ゼバスティアン・バッハ。この音楽家の名前を冠するお祭は、独国内だけでもいくつも存在していて、それぞれが演目や運営に工夫を凝らし、たくさんの聴衆を集めるべく努力している。
 たとえばイースターのころに催される「テューリンゲン・バッハ週間」は、開催期間がひと月と長く、その間バッハの故郷テューリンゲン州の各都市を舞台に演奏会が繰り広げられる。聴きものはなんと言っても、受難曲。世界的な古楽奏者たちがバッハゆかりの土地で、受難週に受難曲を聴かせてくれるのだ。
 ライプツィヒ・バッハ音楽祭は、1都市開催型。10日ほどの期間に100を越える公演を詰め込む。街自慢のバッハ史跡のいたるところで演奏会が行われるので、コンサートをめぐるだけで、バッハが住んだ場所、働いた教会、歩いた小径を追体験することができる。千秋楽は《ロ短調ミサ曲》。その年、もっともすぐれた《ロ短調》が聴ける。
 旧西独代表として、アンスバッハのバッハ音楽祭もはずせない。隔年開催でモダン・古楽問わず、実力派の音楽家が多数、出演する。魅力はなんと言っても幕間のワイン!フランケン地方に属するこの街は、ワインの実力も一流なのだ。1週間ほどの音楽祭、ワイン好きは飲みっぱなしになる怖れがあるので注意。
 そして今回訪れるケーテン・バッハ音楽祭。バッハがこの地で宮廷楽長を務め、ベルリン流れの達者な楽師たちと高度な音楽を奏でていたことは、有名な史実。その縁でこの街でもバッハ祭りが開かれる。とはいえ、ライプツィヒのような大都市(ドイツ基準)と違い、まあ完全に「地方のさらにいち地方都市」。期間も5日ほどで、短期集中型だ。
 ところがこの音楽祭、他のバッハ祭を凌ぐ豪華な内容で聴衆を集めている。5日間の音楽祭に、市の2年分の音楽関連予算をほとんど投下したような、豪華なプログラムなのだ。それは今年のプログラムにもよくあらわれている。今回はその一部を紹介。これからしばらくの間は、ケーテンよりバッハ音楽祭の様子をお知らせする。
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【9月3日(水)19:30 】ヤコプ教会▼ミンコフスキ&レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル=グルノーブル▼10人ほどの声楽アンサンブルで合唱も独唱もカヴァーする、ミンコフスキお得意の方式で《ロ短調

【9月4日(木)11:00 】アグヌス教会▼イザベル・ファウスト(Vn.)▼バッハのパルティータ2曲でクルタークを挟む、無伴奏づくし

【9月4日(木)19:30 】アグヌス教会▼パウル・ヴァン・ネヴェルほか▼バッハやリームの作品を組み合わせて「レクイエム」仕立てにするプログラム

【9月5日(金)11:00 】バッハ・ザール▼ピョートル・アンデルシェフスキ(Pf.)▼バッハの《イギリス組曲》からベートーヴェンの作品110を経て、シューマンの作品21へとつなげる、ドイツもの一色の演奏会

【9月5日(金)15:30 】アグヌス教会▼ドロテー・ミールツ&ハンブルガー・ラーツ・ムジーク▼J・S・バッハ、アーベル、C・P・Eバッハ(生誕300年!)と、ケーテン縁の音楽家を並べて紹介

【9月5日(金)19:30 】ヤコプ教会▼トン・コープマンアムステルダムバロック・オーケストラ▼管弦楽組曲第3番、カンタータ127番、マニフィカトと「固め打ち」の一夜

【9月6日(土)11:00 】バッハ・ザール▼フランチェスコ・トリスターノ(Pf.)&ケルン室内管弦楽団▼BWV1052, 1055, 1058などをトリスターノが弾き振りする、協奏曲の夕べ

【9月6日(土)18:30 】アグヌス教会▼シギスヴァルト・クイケンラ・プティット・バンド▼《ブランデンブルク協奏曲》の3・5・6番のあいだあいだに《無伴奏チェロ(・ダ・スパラ)組曲》を挟む豪華器楽曲祭り!

【9月6日(土)22:30 】ケーテン城旧厩舎▼フランチェスコ・トリスターノ(Pf.)▼バッハ作品に加え、自作も紹介する「バッハ・パーティー」

【9月7日(日)11:00 】バッハ・ザール▼エフゲニー・コロリオフ(Pf.)▼いま、モダンピアノでもっとも素晴らしいバッハ弾きのひとり、コロリオフの《ゴルトベルク変奏曲》!

【9月7日(日)15:30 】ヤコプ教会▼オランダ室内合唱団▼BWV225, 230といったモテットで、音楽祭の掉尾を飾る


リンク:第25回 ケーテン・バッハ音楽祭

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