ドイツ音楽祭めぐり2013 ― 復活祭編(1)



 「暑さ寒さも彼岸まで」というのはもちろん日本の言い伝えだけれど、お彼岸と時期が重なることが多いイースターを、春の入り口だと考えているヨーロッパ人もそれなりにいる(さもなければあんなに浮かれない)。その証拠に、復活祭の時期にあわせて音楽祭がいくつも開催される。”音楽祭インフレ都市” ザルツブルクイースター音楽祭はその中でも有名なもののひとつ。このたび、当方に分不相応な超高級音楽祭には近づかず、「地元密着型」と「新顔の記念すべき第1回」とに足を運ぶ。
 「地元密着型」はテューリンゲン・バッハ週間だ。バッハ一族の本拠地で、ヨハン・ゼバスティアンが生まれ育ちキャリアを積んだ中部ドイツ・テューリンゲン。この地域の街々をめぐりながら、受難週・復活祭を含む3週間ほど、バッハの音楽に浸るのがこの音楽祭の流儀だろう。今年は3月22日から4月14日、約40の公演が持たれる。今回はオープニングにあたるヘレヴェッへ&コレギウム・ヴォカーレ・ヘントの《マタイ受難曲》(23日, ヴァイマルヴァイマルハレ)と、ピエルロ&リチェルカーレ・コンソートの《ヨハネ受難曲》(29日受難金曜日, アルンシュタット・バッハ教会)とを聴く。音楽祭の飛車角は押さえたといったところ。
 一方、「新顔の記念すべき第1回」がバーデン・バーデン祝祭劇場イースター音楽祭。フランスやスイスとの国境に近い温泉地のこの街。資本主義ドイツの粋を集めた大きな劇場を舞台に、ベルリン・フィルが引っ越し公演を行う。サイモン・ラトルマグダレーナ・コジェナーを連れて「夫唱婦随(?!)」でマーラーの《復活交響曲》を演奏したり、モーツァルト魔笛》の三人官女がマシス/コジェナー/シュトゥッツマンだったり、静養していたヴェンゲーロフが(文字通り)復活したり、樫本大進ベルリン・フィルの腕っこきを引き連れてシューベルトの《八重奏曲》を披露したりと、もう重量級。通貨ユーロが危なくったって、ドイツ経済そのものは好調。ザルツブルクの向こうを張って、高級路線の一翼を担うつもり満々だ。当方は昨年、BCJの同劇場公演を取材した関係でお声がかった次第。「第1回」だからパブリック・リレーションズも気合いが入っているということか。
 それでまあこのあたりの話題、すなわち「ドイツ音楽祭めぐり ― 復活祭編」をしばらくこちらで連載。次回はテューリンゲン・バッハ週間「ヘレヴェッへ《マタイ受難曲》」の巻。


写真:駅舎の上にまで卵を隠そうとするウサギ(DBヴァイマル駅)