三田樂所のチャリティの考え方


 三田樂所(ミタガクソ)は、私の個人事務所。一連のチャリティ企画で便宜上、主催者ということになっています。まあ便宜上でも主催は主催なので、三田樂所のチャリティの考え方をみなさんに知っていただこうと思います。

 まず「バッハの素顔にズームイン!」(4月2日・9日)。これは単発のチャリティ企画として立案されました。相田みつを美術館が無償で会場を、久保田チェンバロ工房が無償で楽器を、出演者が無償で演奏を、スタッフが無償で労働力を提供し実現したものです。その結果、入場料を低く抑えることができました(1500円)。また全員が手弁当だったので、総収入259,198円から経費21,000円を除いた収益238,198円を被災地に送ることができました。これは総収入の92%に相当する額です。またこれらの収支報告を、義援金払込受領証付きで公開しています。

 ゴールデンウィークに控える「東京の初夏 音楽週間」も同様のオペレーション、すなわち関係者はみな手弁当で、収益は全額寄付。チャリティコンサートこそ、がめつい根性で「1円でも多く」取りに行くべきですから、その最も効率の良い日程は5月の黄金週間ということになります。前回は日本赤十字社に送金しましたが、迅速性に問題なしとは言えないので、今回は寄付先として、被災県の地方自治体か被災地で働くNPO等を考えています。

 なお、三田樂所は会場に募金箱を置きません。個人的に「募金箱は無粋だ」と考えているからです。「バッハの素顔にズームイン!」では、東京国際フォーラム避難所においでになる被災者の方をご招待していました(結局フォーラム避難所は開設されなかった)。その被災者の方が演奏会にいらして募金箱を目にし、まさに自分のために施しが行われる様子を見たら、どんな気持ちになるでしょうか。私がその立場だったらみじめな気持ちになるだろうな、と思ったのです。ですから、募金箱を置く気にはなれませんでした。寄付を集めることは良いことだけど、それで被災した方の尊厳を傷つけるのなら、しないほうがまし。そう考えての「ノー募金箱」です。

 ただ、参加された方の寄付のお志を無にするわけにもいかない。そこで、参加者に白い封筒をお渡しし、そこに寄付をたまわり、お帰りの際に寄付の有る無しに関わらず受付で封筒を回収しました。これはなかなか評判の良い方法なので、「東京の初夏 音楽週間」でも行う予定です。

 いずれにしても、これまでの企画は単発もの。だから、自分自身も含め、みなさん瞬発力に任せて手弁当で引き受けてくださるわけです。ただし、支援を続けるためにはそういうわけにいきません。

 みなさんお気づきの通り、東日本の復興には継続した支援が欠かせません。これまでの「全員手弁当方式」だと、協力してくださる方々の負担が大きすぎて、とても持続可能な形態とは言えないのです。そこで、今後は持続可能な支援システム、つまり「お客さまには楽しみを、演奏家にはギャラを、被災地には継続支援を」という仕組みの構築を目指します。そして息の長い支援活動を行って行きたいと考えています。