バッハ《ヨハネ受難曲》BWV245 ― 岡山バッハカンタータ協会



 岡山バッハカンタータ協会の合唱(合唱指揮・佐々木正利)、岡山フィルの管弦楽、ハンスイェルク・シェレンベルガーの指揮による《ヨハネ受難曲》。演奏は第22曲のコラール「あなたが捕われたことで」に重きを置く。その前後のシンメトリーな場面構成を劇的に運ぶために多くのリソースが割かれ、それが豊かに実を結んだ。
 合唱の練度は冒頭の「主よ」三唱を聴けば分かる。安定、色合いの変化、緊張がきちんと歌い分けられる。福音史家のプレガルディエンはドイツの「受難曲歌い」らしいペース配分。すなわち、第1部は流し気味、第2部の第22曲に向けてエンジンを暖め、当該コラールの前後の緊張感を巧みに支配した。第24曲「急げ、悩める魂よ」を歌ったバスの荻原潤にも拍手を。ディクション、詩の表現ともに邦人歌手中、群を抜いて素晴らしい。
 通奏低音にいっそうの発音の多彩さを求めるのは無い物ねだりか。とはいえ、合唱と声部を重複するコラパルテの音色にモダンらしからぬ弁えがあったことは特筆ものだ。(2014年2月11日 紀尾井ホール


初出:音楽現代 2014年4月号

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