日本テレマン協会 第212回定期演奏会



2013年4月26日(金)東京文化会館小 日本テレマン協会 第212回定期演奏会
延原武春(指揮), ウッラ・ブンディース(ヴァイオリン), 出口かよ子(フルート), 高田泰治(チェンバロ), テレマン室内オーケストラ(弦楽合奏

 ドイツ古楽の名ヴァイオリニスト、ウッラ・ブンディースをアンサンブルのリーダーに迎え、テレマン室内オーケストラが東京公演を催した。パーセルテレマン組曲、ムッファトのソナタ(合奏協奏曲)、バッハの協奏曲を巧みに並べ、英独仏伊のスタイルが混合するバロック音楽の世界を立体的に聴衆に示した。
 「通奏高音」とも言えるブンディースのリーダーシップはなかなかの迫力。よきトレーナーを得たおかげでテレマン室内オーケストラは宝を2つ手に入れた。ひとつは弦楽の子音の種類が格段に増えたこと。もうひとつは、それに伴って和声進行の表現が変化したこと。以前は色合いの変化で彫琢していた緊張と緩和を、当夜は「表情の変化」で表現していた。弾ける笑顔、柔和な顔、困り顔、険のある顔、さめざめとした顔……。音楽が「語り」に近くなり、演奏が「芝居」に似る。バロック音楽を演奏するには望ましい変化だ。
 表現の幅を広げた日本テレマン協会。五十周年を祝うに相応しい公演となった。


初出:モーストリー・クラシック 2013年7月号