サイモン・ラトル&ベルリン・フィルからのメッセージ


近況(安否確認にかえて)

 ここ数日、聖書を読んでいます。「神のみ言葉」を求めてというわけではありません。最新の聖書学の成果、学問の営為、思索の深奥に触れることで、いっとき世事を忘れたいから。その点で、田川建三さんの『新約聖書 訳と註』(作品社, 2007年〜)は格好の題材ですし、あわせて同『書物としての新約聖書』(勁草書房, 1997年)を読めば、田川さんの仕事机を覗かせてもらっている錯覚さえ覚えます。氏の新約聖書学の仕事を前にすれば、少なくとも日本語で書かれた音楽学の成果など屁みたいなものです(きっぱり)。
 私のお勧めは、それらに加え、佐藤研さん(田川さんが学問上、攻撃する相手)の『福音書共観表』(岩波書店, 2005年)を手元に置き、福音書相互の関係性を立体的に把握すること。原始キリスト教団の「情報操作」の様子などがうかがえ、なかなか刺激的です(こんな時だから、より一層)。


ラトル&ベルリン・フィルからのメッセージ

 本題です。サイモン・ラトル率いるベルリン・フィルから、日本に向けてメッセージが発信されました(こちら)。がらんとしたフィルハーモニーが印象的。例によってよく響くホールです。内容は動画をご覧いただくとして、今日ご紹介したいのは、18日20:00(日本時間19日早朝4:00)からのインターネット・ライブ中継。ラトル&ベルリン・フィルが、ヴィトルト・ルトスワフスキ《弦楽のため哀悼曲》、同《交響曲第4番》、ヨハネス・ブラームス《クラヴィーア協奏曲第2番変ロ長調》を日本のために演奏します。《哀悼曲》はこのたびの震災を受けてのプログラム。レイフ・オヴェ・アンスネスソリストに向かえて送る協奏曲は、ラトルお得意のブラームスです。
 いま音楽を慰めだと思える方、当該の時間帯に起きている方はぜひご覧ください。すてきな演奏をしてくれると思います。私はその時間、早朝の静けさの中で聖書を読んでいるか、聖書を読む夢を見ているかだと思います。それぞれの仕方で、復興に向かうエネルギーを蓄えていきましょう。


追記:当該の演奏会中継、有料なのですね!知らずにお勧めして申し訳ありません。私はもとより試聴するつもりはないのですが、楽しみにされていた方、興ざめなさったかも知れませんね。ごめんなさい。


写真:ベルリン・フィルハーモニー