新日本フィル、2011/12シーズン発表


<記者会見3>(記者会見2の様子はこちら)
 この日の記者会見、後半は新日本フィル2011/12年シーズンのプログラム発表です。進行は音楽監督アルミンクが自ら務めます。創立40周年を迎える新日本フィルそのものにスポットライトをあてる、というのが同シーズンのプログラムのポイント。そのため、ソリストの起用を控え、「主役としてのオーケストラ」を100%楽しめるように工夫したとのこと。詳しい演目などはこちら(PDF書類)をごらんください。
 当方が気になるプログラム、ベスト3は以下の通り。(A)アルミンク指揮, マーラー《嘆きの歌》(2012年5月, トリフォニー)、(B)メッツマッハー指揮, ブラームス交響曲第1番》ほか(2011年10月, トリフォニー)、(C)アルミンク指揮, ハイドン《十字架のキリストが遺した最後の7つの言葉》(2012年2月, サントリー)。
 さて、ひととおりの説明が終わったところで質問を(予定に無かったのですが、だれも手を挙げなかったものですから)。


[質問(3)]
ヨーロッパで活躍する指揮者を客演に呼んだり、マーラー《嘆きの歌》を舞台に掛けるなど聴衆にとっては贅沢なプログラム。しかし、これだけのプログラムを組むのはこのご時世、大変だったのでは? 音楽監督の立場からひとこと。専務理事他の方々に運営部門の立場からひとこといただきたい。

[質問(3)への回答]
アルミンク:40周年を迎えるにあたり、オーケストラと指揮者の関係構築を重視したかったので、ソリストを減らし、一方で欧州で活躍する気鋭の指揮者を客演として呼んだ。
横山専務理事:楽団を取り巻く経済的状況は厳しいが、運営側としてはその状況を正直に、何度もアルミンクに説明し理解を求めた。


 これは非常に意地悪な質問(のつもり)。というのも、「40周年なのでオケにスポットをあてる」というのが実は「40周年だけど経済的に苦しいので、高いギャラのソリストは呼ばずに、基本オケだけで乗り切る」という実情を言い換えているだけなのではないか、という疑問から発しているから。
 回答は予想された通り当たり障りの無いものですが、(ア)運営側が音楽監督にごまかし無しに窮状を説明、(イ)音楽監督は限られた条件で最大の音楽的成果を挙げられるようプログラムを配慮、(ウ)足かせのあるプログラムながら、それを前向きな「売り言葉」でカヴァー、という一連の流れは理解できました。これはごく自然な楽団経営でしょうが、このごく自然な楽団経営がきれいに整って見えるところに、アルミンクの手腕や事務局諸氏の努力が嫌み無く感じられ、好感を持ちました。


<記者懇親会>
 記者会見を終え向かった先はトリフォニーホールのホワイエ。記者懇親会が行われました。崔さん、アルミンク、楽団の横山専務理事、ホールの西田プロデューサーらと歓談。 
 崔さんからは、延原武春&大阪フィルの古典派シリーズIV〜VIにコンマスとして参加する旨をうかがい、小躍り。このシリーズは昨年も好評でしたが、今年はよりいっそう成果を上げそうな予感です。日本有数のコンサートマスターが、ブリュッヘンの教えを携え、ピリオド演奏の名匠・延原とともに、大阪フィルの古典派シリーズに挑む。日本の古典派演奏が一段階、深化を遂げる、そんな年になりそうです。
 アルミンクとは、ブリュッヘンともっと話したかった、という点で意見が一致。とりわけ《ロ短調ミサ曲》について話を聞きたいと言っていました。そうそう、《嘆きの歌》の歌手手配の大変さについてもそっと耳打ち。少年歌手が必要だが、付き添いの親の人件費がバカにならないとのこと。なるほど、そりゃそうだ。アルミンクは、当方のバカ話(バッハ・アルヒーフのバッジを自慢など)にもつきあってくれるオープンマインドな音楽家でした。
 横山理事&西田プロデューサーとは、スカイツリー開業に沸く地元との一体的な事業展開についてお話を。ツリーの開業を千載一遇のチャンスだと考えているとのこと。こういった地政学的な事由がマーケティングに結びつくのも、フランチャイズの強み。このストロングポイントを存分に活かしてもらいたいところです。

(了)


写真:クリスティアン・アルミンク(1月28日, すみだトリフォニーホール