ライプツィヒ・バッハ博物館リニューアル(3)


 「音楽博物館」の展示は、造形物を対象とする美術館の展示とは様子が異なります。というのも、モノの紹介ではなくコトの紹介をするのがその役割だから。もっとも重要な要素である音楽そのものを「見える」ように展示することは出来ない、というのが大きな問題で、それではどうするか。代替品(モノ)でイメージを喚起するか、実際に聴けるようにするかのどちらかです。
 ライプツィヒ・バッハ博物館は後者を選びました。オーディオコーナーでは音源が存在するバッハの曲をすべて聴くことが出来ます。2005年にヴァイマルで見つかった有節歌曲<すべては神とともに Alles mit Gott>BWV1127 や、2008年にハレで見つかったコラール・ファンタジー(オルガン曲) <主なる神、我らのかたえにいまさずして Wo Gott der Herr nicht bei uns haelt> BWV1128 などの最新曲も、もちろん試聴可能。アーティストにアーノンクールレオンハルト、コープマンやガーディナーといった一流奏者をそろえる力の入れようで、多くの名演奏に触れることが出来ます。
 残念なのはオーディオ機器が使いにくいこと。操作はタッチパネルで行いますがこれが少し難物で、パネルの感度が低く、初期のタッチパネル式JR自動券売機を思い起こさせます。また操作系の説明が不親切で、5分ほど試行錯誤を繰り返してからでないと好みの曲をすんなりと選ぶことが出来ません。
 それでもなお、博物館の見学者にとってバッハの曲がすべて聴けるメリットは大きいと思います。というのも、館内の展示(とくに自筆譜)を観て「ここに書いてあるこの曲はいったいどんな音がするのだろう」という疑問が浮かんだとき、それを即座に解消してくれるツールがあるのは心強いから。みなさんも博物館においでの際は、オーディオコーナーを活用してみてください。