オペラグラスの最高峰「テアティス」


 どんな職業にも「七つ道具」なるものがあり、それがないと仕事にならない、ということがあるでしょう。私の場合、ノートパソコンは必須の道具。もちろん、紙とペンがあれば何とかなるのですが、海外での取材となると滞在中に締め切りを迎えることもあり、画像編集機能や通信機能を備えたノートパソコンを手放すことは出来ません。インタビューならICレコーダー。これは携帯電話についているので問題なし。そうそう、デジタルカメラはつねに持ち歩くもののひとつですね。(註)
 そういったデジタル・ギアだけでなく、こんなものもあると便利です。クッション。教会の椅子は固く、ホールの椅子とて日本人向けには出来ていません。そんなとき低反発クッションがあると大助かりです。飛行機や列車による移動でも大活躍。
 そして、長年悩み、このたび解決した問題が、演奏の様子を見るためにどうするかということです。美術館などでたまに見かける単眼鏡は、眼がくたびれるので却下。双眼鏡に絞られます。倍率が高いと明るさや視野が犠牲になり、舞台を見るのに向かないので、むしろ低倍率を。焦点が合う最短距離は短いほうが良い。というのも、博物館などでルーペ代わりに使いたいのです。デザインはいうまでもなく・・・。
 現行品には条件に合うものがありません。そこで候補に挙がったのがカール・ツァイス「テアティス Theatis」。1929年から1980年まで製造されたロングセラーで、名前の通り舞台向け。倍率3.5、対物有効レンズ径15.0、射出瞳径4.3、明るさ18.5、実視界11°(見かけ視界38.5°)、最短合焦距離50cmほど、本体重量225g(金)・130g(黒)、女性の手のひらに収まる大きさ、というスペックです。
 演奏会はもちろん、博物館・美術館での作品鑑賞にももってこい。リニューアルオープンしたバッハ博物館では、暗い展示室内でしたが、テアティスのおかげでバッハの自筆楽譜の隅々までを確認できました。視野が明るく、最短合焦距離が短いからです。ご覧の通り精悍なデザインの上、とても小さいので、演奏会場や美術館でも違和感がありません。金と黒を場合によって使い分けたいですね。


(註)圧倒的に大切な商売道具は、楽譜と書物です。