ライプツィヒ・バッハ音楽祭 (8)


6月16日、大人だって遠足が好き!


 ライプツィヒ・バッハ音楽祭は毎年、10日ほどの日程で開催されます。そのあいだずっとライプツィヒにいるのはもったいない、よその街に出掛けたいな、とお考えの向きもあるでしょう。心配には及びません。というのも、バッハ音楽祭にはバッハゆかりの街や、貴重なオルガンをめぐるツアーが組まれているからです。今年は主だったところだけでも、アイゼナハ、ヴァイマール、ケーテン、ヴァイセンフェルス、ドレスデンとバッハファンなら一度は足を運びたい場所ばかり。個人旅行では聴けない、ご当地ご自慢の貴重なオルガンによる演奏(場合によっては触れることも!)など、ツアーならではの特典もあります。 
 さて今回、足を運んだのは、チョルタウ。当地のニコライ教会には18世紀のオルガンが「生き残って」います。この町が生んだオルガン建造家・シャイベの手による楽器で、19世紀にいちど改造を施されています。とはいえ、第1手鍵盤と足鍵盤の機構はオリジナル。往時の音色もかくや。
 1746年、このオルガンの鑑定をしたのがJ・Sバッハです。バッハによると「すべてが美しく作られており・・欠陥がない」とのこと。故郷に錦を飾るシャイベの仕事に、バッハのお墨付きがつきました。
 立ち上がりの良い低音(Bass 16')はもちろんのこと、ヴィオラディガンバ栓(Viola di Gamba 8')をはじめとする各音栓の美しさも特筆です。どの音色にしても押し付けがましいところがなく、この日の達者な演奏(ヨハンナ・フランケに拍手)とあいまって、素敵なオルガン試聴会となりました。とりわけ興味深かったのは、C・P・E・バッハの<ソナタ ニ長調>Wq70/5。フォルテピアノなどで演奏されることの多い曲ですが、音栓により音色と音量に変化を持たせられるオルガンでも、演奏効果は抜群。次男バッハが目指した「対照性」がはっきりと浮かび上がりました。
 なにより「遠足」そのものを参加者のみなさんが楽しんでおられます。平均年齢は高めですが(失礼)、みなさんいたって溌剌。今後もいくつかのツアーが続きますので、その様子もお知らせいたします。お楽しみに。


写真:チョルタウ・ニコライ教会のシャイベ・オルガンと演奏者ヨハンナ・フランケ