テレマン<7つのトリオソナタ>


ライナーノートを担当したCDを随時こちらで紹介します。読売新聞CDピックアップにも取り上げられ、好評の1枚です!

テレマンへの挑戦状

 21世紀を生きる私たちの古楽がオリジナルを超えるにはどうすればよいでしょう?要は17・8世紀にできなかったことをすればよいわけです。モダン楽器で当時の演奏習慣を再現すること、これこそ17・8世紀にも20世紀にもなかった音楽、「21世紀の古楽」と言えましょう。
 以上の点からすると、テレマン・プチ・アンサンブルのトリオ・ソナタ集は、まさしく「21世紀の古楽」と呼ぶことができます。結成45年、ソロのお二人が出会ってから50年。そんなベテランの、新しい潮流を拓かんとする姿勢に脱帽です。
 もちろん、このアンサンブルの「思想」が音楽そのものに支えられていることは論を俟ちません。短めのアーティキュレーションやほのかなスイング感(これはタンギングの妙技と言ってよい)は、テレマン特有の推進力を表現するのに一役買っています。チェンバロがソロとして加わるトリオ・ソナタでは、通奏低音にもチェンバロを配置する豪華版。弦楽合奏並の音の厚さまで実現できるチェンバロ2台の布陣は、テレマンの音楽のダイナミズムを充分に伝えてくれます。そもそもリコーダーとオーボエの組み合わせが曲者。音色の対照性からするといかにもバロックの香りが高いのですが、音量に気を配らなければ破壊的な仕上がりになってしまいます。そのあたりは結成45年、文字通り息の合った演奏によって妙なるバランスを保っているわけです。
 なんと言ってもこのCDには愉悦があります。波のように行き来する牧歌的・悲劇的な曲想。立ち替わり現れるひょうきん者・吟遊詩人・煽動家などのキャラクター。飽きさせない構成は、テレマン本人が考えたのではないかと思うほどです。一貫してテレマンの名を冠してきたアンサンブルのトリオ・ソナタ集。これは21世紀の「テレマン」から、17・8世紀を生きたテレマンへの挑戦状なのです。
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テレマン作品集2<7つのトリオ・ソナタ
テレマン・プチ・アンサンブル(モダン楽器による)

G.Ph.テレマン
<リコーダー、オーボエ通奏低音のためのソナタ ヘ長調
<リコーダー、オーボエ通奏低音のためのソナタ ハ短調
オーボエ、オブリガードチェンバロ通奏低音のためのソナタ 変ホ長調
<リコーダー、オーボエ通奏低音のためのソナタ ハ短調
<リコーダー、オーボエ通奏低音のためのソナタ ト短調
オーボエ、オブリガードチェンバロ通奏低音のためのソナタ 変ロ長調
<リコーダー、オーボエ通奏低音のためのソナタ へ長調

リコーダー:北山隆
オーボエ:延原武春
チェロ:曽根健
チェンバロ1:中野振一郎
チェンバロ2:高田泰治

2007年8月16日、17日 神戸新聞松方ホールでの録音セッション
WWCC-7567 ¥2835

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