ヘルマン(ピアノ) バッハ《平均律クラヴィーア曲集第1巻》

J・S・バッハ 平均律クラヴィーア曲集第1巻◇コルネリア・ヘルマン(ピアノ)〔KKC 6064〕

 ライプツィヒ・バッハ国際コンクールでキャリアを切り開いたピアニストの《平均律クラヴィーア曲集》第1巻。《フランス組曲》、《イタリア協奏曲》、《パルティータ》などの録音を経て、《平均律曲集》の沃野に足を踏み入れた。バッハは「前奏曲」と「フーガ」という器に、さまざま材料や調理法の料理を盛り込んだ。当然、表現方法の幅は限りなく広い。その広がりを支える土台の部分の堅固さが、ヘルマンの演奏の美点だ。適切な旋律分節もその美点のひとつ。テンポの緩急にかかわらず曲の推進力が保たれるのはそのおかげだろう。対位法的な部分で声部の交通整理が行き届くのも利点だ。変ホ短調のフーガのように難解な曲の演奏も、最後まで耳をひきつける。



.