アントニーニ, NFM合唱団&バーゼル室内管の「第九」

ベートーヴェン:交響曲第9番 二短調 作品125◇ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮), NFM合唱団(合唱), バーゼル室内管弦楽団(管弦楽)他 〔SICC30498〕

 アントニーニがバーゼル室内管とともに進めてきたベートーヴェン全曲録音シリーズの締めくくり。モダン楽器とピリオド楽器とを併用したハイブリッド管弦楽団が、作曲当時の演奏習慣を踏まえた奏法で第九に迫る。たとえば弦楽器の上下運弓と拍子の上下拍節との平仄を合わせる。そうすると、繊細に綴られた内声部が本来の姿を取り戻し、外声の推進力は増す。それにより第1楽章のシンコペーション、第2楽章のギアチェンジ、第3楽章のエレガンスが水際立つ。それを作品上、全否定する作曲家のメッセージが、18世紀来のオラトリオ伝統によって輝く。第4楽章の朗唱と教会音楽風の箇所とは、いわゆる第九節に陥らず、作品世界の的の中心を射抜いている。



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