平井千絵(フォルテピアノ)「Dream – 愛奏曲集」

Dream – 愛奏曲集 ◇ 平井千絵(フォルテピアノ)〔FOCD-9818〕

 古典鍵盤楽器からモダンピアノまで弾きこなす奏者の新録音。このたびは1790年ごろのワルターピアノのレプリカ1台で、18世紀から20世紀までの作品を演奏する。たとえばモーツァルトベートーヴェン。鍵盤の力動の行き来が、弦楽器の弓の上げ下げを思わせる。装飾音で耳を引きつけ、本割の音で落とし前をつける。軽やかに歌う高音域と重厚に響く低音域との対比は、1790年ごろのワルターピアノの特徴。そんな楽器の美点と作品世界とが高度に一致する。モーツァルトなどでは当然のその一致が、20世紀のケージやセヴラックでも感じられるところに、この録音の味わい深さがある。ポイントは音の消えぎわ。世紀を超えて美が呼応している。



.