「めぐりあう時」(オルガン:吉田愛&アレックス・ガイ)

「めぐりあう時」吉田愛, アレックス・ガイ(いずれもオルガン)〔WAON CD-350〕

 大分のルーテル教会に納められた楽器による18世紀オルガン曲集。足鍵盤と2段の手鍵盤、10の音栓に664本のパイプを備える楽器は決して大規模ではないが、このくらいの大きさだからこそ味わえる音楽がある。たとえばバッハのコラール「目覚めよと呼ぶ声あり」。いくぶんか音圧を犠牲にする代わりに、すこぶる柔和な楽想が顔を出す。一方、パッヘルベルの変奏曲では、楽器の躯体の小ささからは想像しがたいほどに、さまざまな音色の変化と緊張感の推移とを聴くことができる。これは奏者が相応しい音栓を選択している上、旋律に句読点を適切に打つおかげ。中音域から上の笛(パイプ)の音がとりわけ美しいことも、音楽の表情づくりに寄与している。



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