読響アンサンブル・シリーズ第18回

2018年4月9日(月)よみうり大手町ホール
読売日本交響楽団 アンサンブル・シリーズ第18回 

 読響コンサートマスターの長原幸太と同団の7人の弦楽器奏者が、メンデルズゾーンとエネスクの両「弦楽八重奏曲」を披露した。
 読響の個性は、上布を思わせる響きにある。軽やかな布地はいかにも繊細だが、1本1本の麻糸は強く、こしがある。手触りはさらっとしているが、実際には織り目が浮き立ち、生地はゴツゴツと力強い。こうした特徴は、室内楽でいっそう強調される。個性と個性とをぶつけて、スパークしたところに音楽が鳴り響く。いっぽうで、その火花の取り扱いは精妙だ。
 この方向性は作品とも相性がよい。いずれの八重奏曲も作曲家の若書き。年齢相応の青い情念と、年齢の割に熟した作曲手腕とが同居する。演奏者は、推進力のあるメンデルスゾーンの第1楽章では、麻糸のゴツゴツした力感を、細工物のように声部が重なるエネスクの第1楽章では、地紋の細やかさを感じさせる。奏者はこれらの性質を両者の終楽章で結びつけ、力強く繊細な上布を織り出すのに成功した。

【CD】メンデルスゾーン&エネスク◇弦楽八重奏曲


初出:モーストリー・クラシック 2018年7月号



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