ヴィダーケア《デュオ・ソナタ》

ヴィダーケア《デュオ・ソナタ》▼三宮正満(ロマンティーク・オーボエ), 平井千絵(フォルテピアノ)〔FOCD9727〕

革命前後の時代を生きたフランスの作曲家J・Ch・M・ヴィダーケアの作品を紹介する1枚。1817年に出版された3つのソナタを、当時のスタイルの楽器で演奏する。野外楽器の太い音と、サロンで磨かれた雅味あふれる繊細な響きとが同居するのは、19世紀のオーボエの特徴か。三宮の手腕と録音の佳さとが相まって、刻々と変化する息の立体感が克明に伝わる。ピアノからはチェロ、ファゴットヴィオラオーボエの音も聴こえる。楽器の特性はもちろん、弦楽器の弓づかいや管楽器の息づかいを鍵盤上に実現する平井の演奏によるところが大きい。デュオのそれぞれが1人何役もこなすことで、オペラの管弦楽付き三重唱のような厚みと対話とが耳に届く。


初出:音楽現代 2017年2月号




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