ブルネロ&ストット デュオ・リサイタル

 イタリアのチェロ奏者マリオ・ブルネロとイギリスのピアノ奏者キャサリン・ストットがデュオを組み、ベテラン音楽家の妙技を聴かせる。
 冒頭のシューベルトの「アルペジョーネ・ソナタ」で、チェロとピアノの両者が相補いながら、主従なく音楽を作っていることが分かる。たとえば第1楽章の展開部から再現部にかけて。上げ弓のアクセントを両楽器が共有、ピアノが両手でつかんだ和音から導音だけを薄く残して緊張感を保つ。それを受けてチェロが主音でそっと着地し再現部へ。
 こうした共同作業はマーラーの「亡き子をしのぶ歌」の編曲版でも、ペルトの「フラトレス」でも成果をあげたが、白眉はストラヴィンスキーの「イタリア組曲」。上下運弓の力動をチェロとピアノとが共有して推進力を保つ。その中で随時、新古典主義の二十世紀的な裂け目にピアノがくさびを打ち込む。両楽器の高水準の共同作業を聴き、ソロでなくデュオ・リサイタルと銘打った理由に合点がいった。(2016年11月23日 紀尾井ホール


初出:音楽現代 2017年1月号


【CD】
シューベルト《アルベジオーネ・ソナタ》▼ブルネロ(チェロ), ルケシーニ(ピアノ)




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