ネマニャ・ラドゥロヴィチ「バッハ」

ネマニャ・ラドゥロヴィチ(ヴァイオリン)▼ドゥーブル・サンス(弦楽合奏)ほか〔UCCG1749〕

ヴァイオリン界のヴィジュアル系ともいうべき奏者、ラドゥロヴィチのバッハ特集盤。ヴィジュアル系と言っても、音盤でその姿が見えるわけでもなく、ただ聴いてまっとうな演奏かどうかが問われる。結論から言えば、彼らの音楽はまっとうであり、聴くに値する。逆に言えば、刺激的であることを売りにするほど先鋭的でもない。少し大げさと思える表現、たとえば対比の利いた緩急や強弱、少し速いテンポも、それが和声の段落感や音楽の律動につながっているので、矩を超えているわけではない。もちろん、お門違いの表現が全くないわけではないが、それとて不勉強のモダン演奏よりはいくらもましだ。アンサンブルとのやりとりもこなれていて、共演の豊富さを感じさせる。


初出:音楽現代 2017年1月号




.