読売日本交響楽団 第560回定期演奏会



 独の若手指揮者コルネリウス・マイスターが読響を振って、ハイドン交響曲第6番「朝」とマーラーの同第6番「悲劇的」とを披露した。マイスターは2017年度から読響の首席客演指揮者に就任する。当夜はいわば内定式。指揮者は両交響曲の番号のつながりだけでなく、両者に演奏表現のバイパスが通ることを示した。
 「朝」で指揮者は、「作品が秘める緊張と緩和」と「オルガン風に移ろう管弦楽の音色変化」とを結びつけていく。さらにそこに、弦楽器の運弓などを紐づけすることで、響の緊張感・音の色合い・拍の力動を一体のものとして、作品の中に展開する。すると大仰な表現なしでも、ハイドンの大胆な音楽に迫力が出る。
 「悲劇的」でも同様の管弦楽さばき。そのおかげで終楽章では、息長く着実に緊張感が高まっていく。それをハンマーが「台なし」に。この「台なし」感こそ作曲者の目指すところ。颯爽とした鳴り響きの陰に隠れる「粘り腰」こそ、この指揮者の身上のよう。〔2016年7月14日(木)サントリーホール


初出:モーストリー・クラシック 2016年10月号




.